著者
竹村 祥子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.57-60, 2009

1990年代後半の経済の構造転換と家族の多様化により,親の経済基盤の二極化が進んでいくなか,その状況の報告をうけて以下の点について検討する必要があると考えた。一つは,首都圏の就学前児童の保護者世帯の経済的差異や母親の学歴の差異と,子どもの教育機会の差異が関連していることがどのような格差のもととなるかを考えること。二つめは,「より良い子育て」や「リスク回避戦略」として子どもに小・中学校受験をさせている親とそうでない親たちとの階層分断化,生活圏での分断化が起こる可能性があるということが首都圏特有の問題なのか,地方の家族においても潜在的に抱えている格差問題であるのかを精査していく必要があること。三つめは,母子家庭の貧困・低所得問題と母子家庭が幾重にも周縁化され,貧困の世代間再生産が起こっていることへの対処はどうすべきかを考えることである。いずれにしても,このような家族の二極化によって,子どもの不平等(格差)がどのように進むのか,日本の家族全体の格差問題であるのかを検討し,対策を立てていくことが緊急の課題である。