著者
白井 彦衛 貫井 文雄 竹林 昭廣
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.67-79, 1983-12-25

本論文は,東京の池泉136カ所,池泉庭園65カ所を調査することにより,江戸から東京にかけての水源の変化と池泉庭園の変質状況を解明することを目的としている.江戸の庭園の特徴は,池泉を効果的に利用するところにある.庭園の水源は,海,河川,地下水(湧水,井戸水),上水に依存していたが,その中で湧水の利用が圧倒的に多かった.江戸が東京と呼称を変えたころから,市街地は構造的に大きな変貌をとげた.その結果,水辺の埋立,上水の廃止,地下工事による湧水の涸渇など水系の変化を生じ,同時に池泉庭園もまた大きく変質した.とくに,上水型庭園は7カ所から0カ所に,潮入型庭園は6カ所から1カ所に,湧水型庭園は37カ所から18カ所に減少したが,河川水型庭園の4カ所には変化がなかった.その他に特殊なタイプが若干あり,また15カ所の庭園の水源は不明であった.