著者
ペパー エリック Shumay Dianne M. Moss Donald Sztembis Rafal 竹林 直紀
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.69-76, 2014

健康信念モデル(Health Belief Model)の理論においては,医学的治療や患者のセルフケアを計画する場合には,クライアントの病気への考え方を考慮する必要があると考えられている.クライアントと医療者の病気の原因に対する考え方(原因帰属)が一致した時に,勧められた医学的治療やセルフケア計画を本人が受け入れ易くなる.この論文では,疾病の原因帰属における自己コントロールと他者コントロールの視点から述べてみたい.クライアントが,病気は自分で治すことはできず外科手術や薬物療法のような他者による治療だけが有効と信じている場合,自己コントロールや行動変容が求められる生活指導や自己養生法などのアプローチを受け入れることは難しい.医療専門家が患者の価値観や病気への考え方を考慮せず,一方的に病状や治療について説明した場合,病気への不安を高めてしまい病状を悪化させてしまうことも起こりうる.他方,希望を持てるような言葉で医師から説明を受けると,プラシーボ効果により治癒過程が促進される.著者は,バイオフィードバックとソマティックフィードバックの体験が,疾病の原因帰属の認知を変え,思考と感情が身体の生理反応に影響するということへの気づきを促すための効果的な方法となりうると考えている.この臨床実践レクチャーでは実際の症例を2つ提示し,ソマティックフィードバックの具体的な方法についても紹介したい.
著者
竹林 直紀
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.77-82, 2011-10-25

この度の東日本大震災や原発事故による大きな環境の変化は,心だけでなく身体にも自律神経を介して影響を及ぼしている.「精神生理学的ストレス(トラウマ)ケア」は,心身のストレス反応を自分自身の力で改善していくためのセルフケアの方法である.医療施設や薬がない状況下でも,自律神経バランスを自分自身で回復することで,さまざまな心と身体の症状を改善することができる.この方法は,従来の「治療モデル」の考え方による専門家を必要とする医療的ケアとは異なり,「教育モデル」に基づき,震災被害により引き起こされた自律神経系などのストレス反応を,認知,行動,栄養の3つの要素を重視しながら自らセルフコントロールやセルフケアにより回復させていく.