著者
竹田 晋浩
出版者
一般社団法人 日本呼吸療法医学会
雑誌
人工呼吸 (ISSN:09109927)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.12-16, 2021 (Released:2022-05-30)
参考文献数
5

本邦の呼吸不全に対するECMO(extracorporeal membrane oxygenation:体外式膜型人工肺)治療は、2009年のH1N1インフルエンザ当時は海外の治療水準に大きく遅れを取っており、その改善を目的として、日本呼吸療法医学会にてECMOプロジェクトが立ち上げられた。このプロジェクトは少しずつではあるが着実に成果を上げ、2016年には本邦のECMO治療の成績は世界のトップレベルにまで至ったことが確認できた。 そして2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して日本COVID-19対策ECMO net(ECMO net、現:NPO法人日本ECMO net)が立ち上げられ、ECMOプロジェクトを創設した当学会が共同で活動を行うこととなった。多くの関係学会からもECMO netの活動に対する賛同と協力を得るに至り、まさに“ALL JAPAN”によるCOVID-19への有事対応となった。 この現象は、本邦の医学史のなかではきわめて異例であり、所属団体を超えた医療者同士の関係構築が、その後のECMO netの活動を強固たるものにしてゆく礎となった。当学会から発展したECMO netは、重篤な新興感染症パンデミックに対して本邦で初めて実働した緊急医療支援団体であり、その活動は今後の医療政策において欠かせぬものとなるであろう。