著者
竹田 真敏 中原 正俊
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
Journal of Computer Aided Chemistry (ISSN:13458647)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.38-52, 2009 (Released:2009-07-22)
参考文献数
41
被引用文献数
3 3

21世紀になり、各種生物ゲノムの構造(塩基配列)が加速度的に報告されている。ゲノムDNAには一個の個体を産み出す情報のあることは確かであるが、その情報が正確・迅速・安全に発現し、伝わるためには個々の遺伝子だけでなく、非遺伝子領域を含めたゲノム全体の構造を見ることが重要になっている。本論文では、出芽酵母S. cerevisiae、大腸菌E. coli、ヒトH. sapiensはじめ各生物ゲノムDNAの構造の特徴を見出すため、ゲノム全体の塩基配列を解析した。さらに、出芽酵母4番染色体及びヒト22番染色体とゲノムサイズ(塩基数)、塩基組成、塩基配列の出現頻度がそれぞれ同じ人工染色体を作製し、実際の染色体の構造(塩基配列)と比較した。その結果、ゲノムには、(1)塩基(配列)の対称性、(2)塩基分布の偏在性、(3)塩基分布の多相な自己相似性、が同時に備わっていることが重要であることがわかった。さらに、多相な自己相似性はゲノムサイズが大きい真核生物ほど顕著に観察された。