著者
澤田 隆介 岩田 通夫 梅崎 雅人 臼井 義比古 小林 敏一 窪野 孝貴 林 周作 門脇 真 山西 芳裕
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
巻号頁・発行日
pp.2B01, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
2

漢方薬(漢方方剤と呼ばれる葛根湯など)による医療は日本の独創的かつ伝統的な治療体系である。その有用性は、欧米でも注目されている。本研究では、富山大学和漢医薬学総合研究所が長年に渡り蓄積してきた莫大な漢方医薬情報を、統合的に解析するための情報技術を開発し、漢方薬の作用機序の科学的考察や、漢方薬の新規効能予測を行うアルゴリズムやデータベースを開発した。漢方薬、その構成生薬及び成分化合物と標的タンパク質の階層的関係から、漢方薬が生体に薬理学的効果を及ぼすメカニズムの考察を可能にするだけでなく、in silico結合シミュレーションや機械学習の手法を用いて、漢方関連ビッグデータを解析することにより、漢方薬の新しい適応可能疾患の予測(漢方薬リポジショニング)も可能にした。本研究で構築したデータベース「KampoDB」は、web上で公開している(http://wakanmoview.inm.u-toyama.ac.jp/kampo/)。
著者
矢城 陽一朗 直島 好伸
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.72-73, 2015

我々は、有機合成で多用されている酵素リパーゼの鏡像体選択性の機構解明において、タンパク質とリガンド分子間の相互作用を詳細に解析できるフラグメント分子軌道(Fragment Molecular Orbital: FMO)法を一つの研究手法として使用している。今回、3種の酵素リパーゼ、Burkholderia cepacia lipase (BCL)、Candida antarctica lipase typeB (CALB)、Candida antarctica lipase typeA (CALA)、と有機化合物の複合体についてFMO2相互作用計算を行ったところ、BCLでは HIS286が、CALB ではTHR40が、そしてCALAにおいてはAPS95が、それぞれのリパーゼの基質の鏡像体認識に深く関わっているアミノ酸残基であると推定できる結果を得た。これに加え、FMO法をインシリコ創薬の実用的な研究手法として発展させるために2014年11月に設立された「FMO創薬コンソーシアム」の活動と、そこで我々が実行している標的タンパク質レニンと化合物の複合体に関するスーパーコンピュータ「京」による計算を紹介する。
著者
福島 真太朗 本山 裕一 吉見 一慶
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
巻号頁・発行日
pp.2C12, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
9

近年,機械学習や深層学習を用いた逆合成の経路探索が活発になっている.本研究では比較的簡便なColey et al.の方法に着目する.この方法は目標とする生成物と反応データベースのマッチングを行い,生成物と反応物の類似度をそれぞれ計算し,その類似度に基づき一段階前の反応候補を出力する.Coley et al.の方法は既存の方法に比べて比較的高精度である一方で,探索空間は過去に生じた反応に限定される.本発表では以上の問題点に着目し,探索空間を広げるために敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Network,GAN)を用いた手法を提案する.この手法は,探索空間を広げるためにGANに基づく反応物の生成モデルを学習し反応物を生成した後に,順方向の反応予測により反応式を生成する.その結果,既存の反応データベースには存在しない反応物が生成された.また,列挙した反応経路の中に正解が含まれるサンプルの割合は既存手法よりも高くなった.現在,探索空間が拡大されたことの検証も進めており,当日は詳細について発表する.
著者
Norihito Kawashita Hiroyuki Yamasaki Tomoyuki Miyao Kentaro Kawai Yoshitake Sakae Takeshi Ishikawa Kenichi Mori Shinya Nakamura Hiromasa Kaneko
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
Journal of Computer Aided Chemistry (ISSN:13458647)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.15-29, 2015 (Released:2015-10-29)
参考文献数
192
被引用文献数
3 6

We have reviewed chemoinformatics approaches for drug discovery such as aromatic interactions, aromatic clusters, structure generation, virtual screening, de novo design, evolutionary algorithm, inverse-QSPR/QSAR, Monte Carlo, molecular dynamics, fragment molecular orbital method and matched molecular pair analysis from the viewpoint of young researchers. We intend to introduce various fields of chemoinformatics for non-expert researchers. The structure of this review is given as follows: 1. Introduction, 2. Analysis of Aromatic Interactions, 2.1 Aromatic Interactions, 2.2 Aromatic Clusters, 3. Ligand Based Structure Generation, 3.1 Virtual Screening, 3.2 De Novo Ligand Design, 3.3 Combinatorial Explosion, 3.4 Inverse-QSPR/QSAR, 4. Trends in Chemoinformatics-Based De Novo Drug Design, 5. Conformational Search Method Using Genetic Crossover for Bimolecular Systems, 6. Interaction Analysis using Fragment Molecular Orbital Method for Drug Discovery, 7. Matched Molecular Pair Analysis and SAR Analysis by Fragment Molecular Orbital Method, 8. Chemoinformatics Approach in Pharmaceutical Processes, 9. Conclusion.
著者
浜中 雅俊 種石 慶 岩田 浩明 奥野 恭史
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
巻号頁・発行日
pp.46-49, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
13

医薬品となる候補化合物のスクリーニングのための,タンパク質と化合物の相互作用の予測について述べる.膨大な種類の化合物から医薬品になり得るリガンド化合物を見つけ出す工程は,開発にかかる時間とコストを押し上げる主要因となっており,計算により優れた性質の候補化合物を絞り込むインシリコ(in silico)スクリーニングの手法が提案されてきた.我々は,これまでサポートベクターマシン(SVM)を用いた予測手法CGBVS法を提案してきた.しかし,その手法では,学習データが増えるにつれて学習時間が長大になるなど,大規模な相互作用データを学習していく上で検討すべき課題があった.本稿では, Deep Learningの一手法である,Deep Belief Networks(DBN)を用いたCGBVS-DBN法を提案し,SVMとの性能を比較する.実験の結果,CGBVS-DBN法がCGBVS法に比べて高い性能であることを確認した.
著者
影山 椋 清野 淳司 藤波 美起登 五十幡 康弘 中井 浩巳
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
巻号頁・発行日
pp.2C11, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
4

Orbital-free密度汎関数理論(OF-DFT)では、原子・分子のエネルギーを軌道を用いず電子密度の汎関数で表す。我々は運動エネルギー(KE)項について、Kohn-Sham DFT(KS-DFT)計算で得た電子密度とKE密度の関係を機械学習で結び付けKE密度汎関数(KEDF)を構築する手法を開発した。機械学習により構築されたKEDF(ML-KEDF)は従来のあらゆるKEDFより小さい誤差でKS-DFTのKEを再現した。一方、ML-KEDFを用いてOF-DFT計算を行うには初期電子密度から基底状態の電子密度を決定する最適化計算が必要となる。本研究はこの計算を実装した。またこの計算で用いる、ML-KEDFの電子密度に関する微分で表される運動ポテンシャル(KP)を機械学習により構築する手法を開発した。幾つかの原子・分子に対し最適化された電子密度と全エネルギーの計算精度について検証を行った。
著者
岩田 通夫 Longhao Yuan Qibin Zhao 田部井 靖生 山西 芳裕
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
巻号頁・発行日
pp.2B09, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
4

ヒト由来細胞の薬物応答を遺伝子レベルで明らかにすることは、創薬において重要課題である。しかしながら、実際の薬物応答遺伝子発現データは多くの欠損値や未観測値を含んでいる。本研究では、新規のテンソル分解アルゴリズムTT-WOPT (tensor-train weighted optimization)を用いて、高階テンソル構造からなる薬物応答遺伝子発現データを解析する手法を提案した。本研究では、208薬物、978遺伝子、15細胞、3時点からなる薬物応答遺伝子発現データに適用した。実際に、提案手法は既存手法よりも、薬物応答遺伝子発現データ中の欠損値を正しく補完できた。また、遺伝子発現データから薬物の効能を予測する問題においてTT-WOPTで欠損値を補完することにより薬物の効能予測の精度が向上することを示した。提案手法は、薬物の標的分子予測や新規効能予測など様々な用途への活用が期待できる。
著者
奥津 尚子 玉井 秀明 清水 栄佑 栗田 典之
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
巻号頁・発行日
pp.P19, 2014 (Released:2014-11-20)
参考文献数
4

近年、放射線の人体への影響が深刻な問題となっている。放射線によって体内に生成されるラジカルはDNAと反応し、DNAの構 造へ大きな損傷を与える。したがって、DNAへのラジカルの反応機構を解析することは、放射線によって引き起こされるDNAの損 傷を明らかにするために重要である。本研究では、我々は密度汎関数計算により真空中、および水中でのG-C/A-T塩基対とラジカルの複合体の安定構造と反応機構の遷移状態を探索する。
著者
加藤 涼太 田中 健一 小寺 正明 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
巻号頁・発行日
pp.1P12, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
7

化合物の物性を予測する手法の一種に、定量的構造物性相関(QSPR)がある。QSPRでは、物性既知の化合物を用いて化合物の構造と物性値の間の関係を統計的手法でモデル化する。QSPRの入力として化学構造から計算した記述子を用いる場合、多くの記述子の中から最適な組合せを見つけなければならず、その中に予測に必要な情報が十分に含まれているか分からないという問題もある。そこで、本研究では記述子を計算することなく原子の3次元座標値と原子番号および分子のグラフ構造を入力とし、Graph Convolutional Neural Network(GCNN)を用いた予測手法を開発した。記述子を用いる手法と比較した結果、予測タスクによって提案手法が勝る場合も劣る場合もあった。その原因としてモデルの表現力の不足が考えられるため、入力方法やモデル構成を改良することで性能が向上すると考えられる。
著者
萩原 正敏
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
巻号頁・発行日
pp.1S01, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
5

我々はスプライシングなどの遺伝子発現過程を、蛍光・発光プローブによって生体内で可視化する独自技術を開発し、創薬スクリーニングに用いることで、RNAスプライシングを操作できる合成化合物を開発してきた。その作用機序の検討やトランスクリプトーム解析などから、スプラシング操作薬の標的となり得る遺伝性疾患の条件が判明しつつある。遺伝病データベース等をもとに標的疾患をリストアップして、独自のスプライシングアッセイと、疾患iPS細胞および疾患モデルマウスによる薬効評価を行っている。このような新しい創薬手法を駆使して、従来は治療出来なかったライソゾーム病などの遺伝病や特殊な癌などに対する治療薬候補物質を見出している。また、脳梗塞や神経変性疾患などに対する再生医療も、小分子で実現できる可能性が見出されている。ケミカルバイオロジーに立脚した新しい創薬手法とその今後の可能性について議論する。