著者
山口 昇一郎 金子 和典 川島 幸子 竹村 陽 増本 憲考 笠正 二郎 舟橋 弘晃 吉岡 耕治
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.155-160, 2017-12-21 (Released:2018-03-14)
参考文献数
6

我々は,豚凍結精液に用いる精液希釈液にカフェインを添加して人工授精(AI)を行うと子宮内に出現する白血球数を抑制し,子宮内の生存精子数を増加させることで繁殖性が向上することを明らかにしている。この技術を応用して,本研究では,カフェイン添加モデナ液を用いて豚液状精液のAIを行うことで一般農場における暑熱期の繁殖性が向上するかについて検討した。供試精液は,約2年間にわたって月に1回,農場の飼養する種雄豚から採取した。適温期(11〜5月)および暑熱期(6〜10月)における平均異常精子割合は,それぞれ20.4%および38.4%であった。AIは,子宮頸管注入式カテーテルを用いて液状精液100ml(注入精子数として平均43億)のみを注入するControl(適温期n=23,暑熱期n=23),精液注入前に50mlのモデナ液を注入するModena区(適温期n=32,暑熱期n=25),同様に50mlのモデナ液に30mMのカフェインを添加したCaffeine区(適温期n=28,暑熱期n=27)とした。暑熱期におけるControlおよびModena区のAI後の分娩率は,適温期に比べて有意に低下した(P<0.05)。Caffeine区では,暑熱期においても適温期と分娩率に差は認められなかった。以上のことから,暑熱期においてカフェイン添加希釈液をAI時に注入することにより精液性状悪化に伴う分娩率の低下を改善できることが明らかとなった。