著者
笹原 八代美
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 : 熊本大学倫理学研究室紀要 (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.160-181, 2007-03

この論文では、まず、Iでは、障害と権利についてそれぞれの概念整理をすることからはじめる。これらの整理をふまえて、優生保護法のもとに繰り広げられた女性の権利と障害者の権利に関する主張について検討する。IIでは、すでに女性の権利が出生前にさかのぼって主張されているとみなされる性選択による妊娠中絶に関して、そのような主張がどのようにして承認されてきたのか、その過程を検証する。IIIでは、IおよびIIで検討したことをふまえ、わが国の女性障害者たちの主張やイギリスの女性障害者の主張などを通して、出生前診断やそれを受けての選択的中絶に関して「範疇としての障害者」の権利について考察する。ただし、この論文では、出生前診断には受精卵を対象とする着床前診断は含めない。