著者
笹尾 英嗣
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.10, pp.345-359, 2014-10-15 (Released:2015-01-15)
参考文献数
65
被引用文献数
1

わが国の高レベル放射性廃棄物の地層処分概念では,地質環境には長期的な安定性,人工バリアの設置環境および天然バリアとしての機能が期待されている.本研究では,ウラン鉱床を地層処分システムのアナログと見なして,わが国の地質環境がこれらの機能を有することを例証するため,ウラン鉱床の分布と産状に関する情報をまとめた.ウラン鉱床は様々な年代の地質体に胚胎し,ウランの大部分は様々な鉱物などに収着して存在すること,酸化帯でもウラン鉱物に6価のウランが固定されていることがわかった.ウランは高レベル放射性廃棄物中の核種の多くと酸化還元条件での化学的挙動が類似する.ウラン鉱床を保存してきた地質環境は地質学的な時間スケールで安定に還元環境を保持してきたと推定されることから,地層処分に適した地質環境は広く分布することが示唆される.ウランの産状からは,わが国の様々な地質環境において天然バリア機能が期待される.