著者
中川 光弘 宮坂 瑞穂 三浦 大助 上澤 真平
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.473-489, 2018-07-15 (Released:2018-08-18)
参考文献数
39
被引用文献数
12

石狩低地帯の西方には支笏-洞爺火山地域が位置し,後期更新世から大規模な爆発的噴火が続いている.これらの噴出物は石狩低地帯に多数のテフラ層として堆積しており,古くからテフラ層序学・年代学に関する多くの研究が行われてきた.それらの結果,支笏-洞爺火山地域では約13万年前頃から洞爺火山で活動が開始し,その後にクッタラ火山,そして支笏火山と活動が波及し,カルデラ形成噴火が続発したこと,さらにそれらのカルデラ火山の活動に並行して,背弧側では羊蹄山や尻別岳の活動があったことが明らかになっている.今回の巡検では代表的な露頭を巡り,北海道の更新世および完新世の主要な指標テフラとテフラ層序を紹介するだけではなく,最近の研究成果による詳細な噴火履歴および代表的噴火の噴火様式についても議論する.
著者
小林 国夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.67, no.784, pp.32-47, 1961-01-25 (Released:2008-04-11)
参考文献数
27
被引用文献数
3 1
著者
倉本 真一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.483-487, 2009 (Released:2010-03-10)
参考文献数
12

This report introduces the scientific drilling project “NanTroSEIZE (Nankai Trough Seismogenic Zone Experiment)” proposed for the IODP (Integrated Ocean Drilling Program). NanTroSEIZE is a large, international, multidisciplinary scientific project that required long-term planning and implementation. The project involved almost two decades of planning and may continue for another decade while carrying out drilling, coring, and long-term borehole monitoring. This large scientific project has now officially started, and we expect that the resulting scientific findings will be of international significance.
著者
西本 昌司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.7, pp.343-353, 2020-07-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

名古屋城の石垣に使われている膨大な量の石材は,どこからどのようにして調達されたのだろうか.詳しくは分かっていないとはいえ,地質学の目で見ればおおよその見当がつく.名古屋城の石垣の特徴は,石材の岩石種がバラエティに富んでいることであり,様々な場所から運ばれたことを示している.それは,名古屋城が全国の大名が動員された天下普請によって築城されたことを反映していると思われる.そこで,地質学的な視点から名古屋城の石垣を見学することで,岩石と人々との関わりを感じてもらいたい.合わせて,近代建築として重要文化財となっている名古屋市役所に使われている石材も見学する.
著者
田近 淳 大津 直 乾 哲也
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.23-35, 2016-01-15 (Released:2016-04-15)
参考文献数
40
被引用文献数
11

北海道,厚幌1遺跡で発見されたマウンドについて,トレンチ壁面の観察・記載から地すべり移動体であることを示し,その運動過程を検討した.マウンドは,主に樽前d降下火砕堆積物(Ta-d:8-9ka)起源の軽石層・岩片層・腐植層から構成され,Ta-d上位の腐植層を覆い,樽前c降下火砕堆積物(2.5-3ka)に覆われる.縦断方向の壁面では,マウンド堆積物の下底に腐植およびそれとロームの混合層からなる非対称変形構造やデュープレックスが認められた.また,堆積物にはリストリック正断層に類似した非対称伸長構造が見られた.これらのセンスはマウンドが背後の山腹から移動して定置したことを示す.このような未固結で成層した火砕物の地すべりは地震動によって引き起こされたと考えられる.14C年代と層序関係から,このマウンドを形成した地すべりの発生は補正年代で約4,600yBP以降から約2,500yBP以前までの間である.この年代は石狩低地東縁断層帯馬追断層の最新活動期と重なる.

32 0 0 0 OA 千葉セクション

著者
千葉セクションGSSP提案チーム
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.5-22, 2019-01-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
111
被引用文献数
1 4

千葉セクションを中期更新世の基底とチバニアン階を定義する国際境界模式層断面とポイント(Global Boundary Stratotype Sections and Points:GSSPs)として提案した.千葉セクションは,千葉複合セクションの中心セクションであり,房総半島中央部に分布する下部-中部更新統境界を含む連続的かつ堆積速度の非常に大きな海成泥質堆積物である.同セクションからは,多種の海生化石と花粉化石,Matuyama-Brunhes(M-B)境界,酸素同位体比変動,および多数のテフラが報告されている.とくにM-B境界直下のByk-Eテフラからは772.7±7.2kaのU-Pb年代値が報告されており,これらを基に詳細な年代層序が確立している.千葉セクションはアクセスも良く,露頭の保存も確約されている.以上のことから,千葉セクションは下部-中部更新統GSSPにもっとも適した候補地である.
著者
田沢 純一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.503-517, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
162
被引用文献数
52 43

日本列島の先新第三系は, (1) 南部北上テレーン (前期オルドビス紀~後期デボン紀付加テレーン), (2) 秋吉テレーン (中期~後期ペルム紀付加テレーン), (3) 美濃テレーン (前期ジュラ紀~前期白亜紀付加テレーン), (4) 四万十テレーン (後期白亜紀~新第三紀付加テレーン) の4テレーン, およびジュラ紀末期~白亜紀初期に秦嶺—大別縫合帯からナップとして加わった (5) 飛騨—阿武隈ナップ (変成相中・古生界ナップ) に区分される. これらのテレーンおよびナップは, NE-SW方向に伸び, 南東へ向かって若くなる極性をもって配列している. 日本列島の骨格は, 前期オルドビス紀以降北中国東縁の沈み込み帯における連続的付加によってつくられた. そして, 後期ペルム紀~後期ジュラ紀の右横ずれ運動, ジュラ紀末期~白亜紀初期の東フェルゲンツの衝上運動, 前期白亜紀~古第三紀 (主に前期白亜紀) の右横ずれ運動により, 大規模な横ずれ移動と地体群の再配列がなされた. 前期白亜紀~古第三紀の左横ずれ変位は1500-2000 kmと考えられる. 新第三紀 (Miocene) に, “原日本” のリフティングによる日本海形成と西南日本の時計回りおよび東北日本の反時計回りの運動, 千島弧の衝突による北海道中央部の西フェルゲンツの衝上, 伊豆—小笠原弧の衝突による本州弧中央部の変形などが起き, 現在の日本列島が完成した.
著者
高田 亮
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.9, pp.473-483, 2010 (Released:2010-12-22)
参考文献数
59
被引用文献数
2 3

インドネシアで起こった有史の大規模噴火の,噴火直前の現象,噴火経緯を総括した.大規模噴火直前には,少なくとも2~3ヶ月前から,小規模噴火が発生していた.この期間には,噴火孔,噴気孔や熱水爆発孔の数や活動する範囲が,カルデラ形成の破局的噴火に向けて拡大し,2 kmから数kmの規模に達する特徴が見られた.大規模噴火に至る中長期の準備過程として,約10万年間,高噴出率の維持により大きな山体を形成したこと,噴火の1万年から数千年前には,噴出率が激減し,噴火様式が爆発的になり,火口が形成される範囲が縮小したり,中心から移動したことなどの特徴を見出すことができる.さらに,インドネシアのカルデラ火山体の規模とカルデラ規模の関係をまとめた.大きい山体には,大きいカルデラが形成される傾向がある.最後に,マグマが蓄積する原因やカルデラの多様性を制御する要因を検討する.
著者
川村 喜一郎 金松 敏也 山田 泰広
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.12, pp.999-1014, 2017-12-15 (Released:2018-03-28)
参考文献数
142
被引用文献数
2 6

本論では,海底地すべりの一般的な特徴,短期および長期の発生メカニズム,海底地すべりによる海洋ハザードについて概説する.海底地すべりは,その形状から,一般的に滑落ドメイン,移動ドメイン,末端ドメインの3つの領域に区画される.滑落ドメインでは開口亀裂,移動ドメインでは剪断変形に起因する非対称変形構造が見られる.末端ドメインでは,圧力隆起部によって特徴づけられる.滑り面は粘土層であると推測されるが,南海トラフで報告されているように非条件下では,砂層も滑り面となる可能性がある.短期的な発生メカニズムは,斜面における荷重の急激な増加や間隙水圧の急激な上昇など,地震に最も関連している.長期的な発生メカニズムは,気候変動によるメタンハイドレートの分解とそれに伴う間隙水圧の増加,長期的な間隙水圧の増加,海山の沈み込み/衝突による地盤の変形,火山活動による斜面勾配の急斜化などがある.
著者
小畠 郁生 長谷川 善和 鈴木 直
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.161-164, 1970-03-25 (Released:2008-04-11)
参考文献数
8
被引用文献数
4 3
著者
楠橋 直 安藤 友一 谷 健一郎 松原 尚志 栗田 裕司 奈良 正和 山路 敦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.411-426, 2022-12-29 (Released:2022-12-29)
参考文献数
71

四国北西部に分布するひわだ峠層は,三波川変成岩類上に載る最古の地層として知られ,しばしば三波川変成岩類の地表への露出年代を制約するために使われる.しかしながら,同層に関する先行研究は少なく,同層と三波川変成岩類との関係すらも明確には記載されてこなかった.そこで本研究では,同層の全貌を明らかにすることを目的とし,地質調査と砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定をおこなった.ひわだ峠層は,層厚100 m以上の浅海成層で,石灰質および非石灰質な礫岩・砂岩により構成される.産出する海棲生物化石と砕屑性ジルコンのU-Pb年代から,その堆積年代は中期始新世のLutetian期前期であると推定される.また,同層は基盤の三波川変成岩類を無整合に覆い,また上位の久万層群によって傾斜不整合で覆われている.したがって,少なくとも四国地方の三波川変成岩類は,中期始新世初めまでには地表に露出していたと考えて良い.
著者
星 博幸 岩野 英樹 檀原 徹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.143-152, 2022-07-06 (Released:2022-07-06)
参考文献数
46

守屋層は北部フォッサマグナ南縁部の中新世古環境や伊豆弧衝突に関連した地殻運動を記録していると推定されるが,その上部を構成する変質火山岩類の年代がよくわかっていなかった.今回,守屋層最上部の唐沢川酸性火山岩部層から15.5±0.2<sub>(2σ)</sub> MaのジルコンU-Pb年代を得た.この結果より,本部層の火山岩類の形成は15.5 Ma頃だったと考えられる.守屋山地域の火山活動はN8帯の下限年代である17.0 Ma以降に始まり15.5 Ma頃まで継続したと考えられ,15.5 Ma以降も火山活動が継続していた可能性はある.守屋層は下部の砕屑岩部分が北部フォッサマグナの内村層に対比されているが,上部の火山岩類も含む守屋層全体が内村層に対比可能と考えられる.この火山岩類の活動は設楽火山岩類の主要活動(約15-13 Ma)に先立って起こったが,設楽火山岩類の一部である津具火山岩類の活動とは同時期だった可能性がある.
著者
小竹 信宏 奈良 正和
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.I-II, 2002 (Released:2010-11-26)
参考文献数
3
被引用文献数
7 11

Piscichnus waitemata Gregory, 1991は白亜紀以降の海成層, なかでも浅海相に広く産する生痕化石である. かつて, この生痕化石は荷重痕やポットホールといった堆積構造の一つと考えられてきた. 現在では, 一部のエイ類やセイウチ類などが, 堆積物中に生息する底生動物を摂食した際に形成された摂食痕である可能性が指摘されている (Howard et al.,1977; Gregory,1991), 形成者の特異な摂食様式を反映し, 生痕化石内部には母岩を構成する粒子が再堆積した際に形成された級化構造や平行葉理が見られる. このような内部構造の特徴と円筒形状の形態とが相まって, 物理的堆積構造と混同される一因となった. この生痕化石が化石密集層内に形成されると, 化石の再配列や濃集が局所的に起こり, 通常の堆積メカニズムでは理解できない複雑なファブリックが見られるようになる. P.waitemata のサイズと形成メカニズムを考慮すると, 生痕形成に伴って大量の堆積物が短時間に撹拌され再堆積することは間違いない. この事実は, 堆積物表層部で起こる生物撹拌作用を考える際に, 一部の魚類や海生ほ乳類の摂食行動が決して無視できないことを示唆している.
著者
沢田 輝 磯﨑 行雄 坂田 周平
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.10, pp.551-561, 2020-10-15 (Released:2021-01-15)
参考文献数
49
被引用文献数
5

東京都日の出町坂本地域の蛇紋岩メランジュ露頭に伴って産する高圧型変斑れい岩および花崗岩類中のジルコンのU-Pb年代を測定した.高圧型変斑れい岩原岩の火成年代は約490Ma(カンブリア紀フロンギアン世~オルドビス紀前期)で,四国や九州の黒瀬川帯に産する類似岩石から報告された年代とよく一致する.花崗岩類の火成年代は約440Maで,約2,400-500Maの年代を持つジルコンも含まれている.本研究の年代測定から,当地域の岩石類は黒瀬川帯の構成要素であり,同帯の東方延長が東京都西部に存在することが再確認された.同地域からの古生代前期高圧型変斑れい岩および花崗岩類の産出は,当時,現在の九州から関東にかけての800km以上におよぶ弧-海溝系が発達していたことを示唆する.
著者
大場 司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.344-356, 2011-06-15 (Released:2011-11-03)
参考文献数
71
被引用文献数
2 13 1

熱水変質鉱物火山噴出物は,水蒸気噴火によって火山地下よりもたらされる.近年の噴火事例研究と同様,高分解能火山層序学でも熱水変質鉱物火山噴出物の記載が増えている.近年の噴火事例研究では,噴火と火山下熱水系の関係が指摘されており,その熱水系の構造を理解するには,熱水性鉱床や地熱研究の知見が有益である.マグマ噴火頻度の低い火山には,火山体内部に発達した珪化変質帯や高度粘土化変質体由来の変質鉱物を多く含む噴出物が産する.一方,マグマ噴火頻度の高い火山の熱水変質鉱物火山噴出物には硫黄系鉱物が卓越する.熱水変質鉱物火山噴出物は主に降下堆積物として産し,フロー堆積物も認められる.噴火には斜面移動が関係する場合としない場合があり,それぞれマグマ上昇が関係する場合としない場合がある.マグマの組成や貫入頻度と,熱水変質鉱物を放出する水蒸気噴火の頻度や構成鉱物の間には密接な関係がある.
著者
長谷川 健 中川 光弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.2, pp.53-72, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
47
被引用文献数
9 12

北海道東部,阿寒カルデラ周縁の火砕堆積物を調査し,その層序・年代を明らかにした.対比にあたっては本質物の岩石学的特徴も活用した.阿寒カルデラ起源の火砕堆積物は,古土壌などの介在によって,少なくとも40の噴火ユニットに区分できる.さらにこれらは,層序が連続し,かつ岩石学的特徴が類似する17の噴火グループにまとめられる(上位からAk1~17).Ak1~17の間には,阿寒火山以外に給源を持つ複数の火砕物が挟在する.Ak2とAk3の間には東燐の屈斜路カルデラから噴出した古梅溶結凝灰岩(0.34 Ma)が,Ak14の中には北海道中央部起源である十勝火砕流(1.3-1.46 Ma)の遠方相が堆積する.このことから,阿寒カルデラは前期更新世から活動を開始し100万年以上にわたって火砕噴火を頻発していたことが分かった.この期間,阿寒火山では,噴火グループごとに異なるマグマ系が活動していた.
著者
図子田 和典 岡村 太路 二村 康平 束田 和弘 竹内 誠
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.645-654, 2020-11-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
23

Miocene dikes and sills are widely exposed in the eastern Shitara area, Aichi Prefecture, central Japan. Whole-rock chemical composition, grain size, lightness, and the alteration ratio of the intrusive rocks from three outcrops in the Shitara area are described in this paper. The central part of the intrusive rock bodies, commonly dark gray, gradually changes into grayish white toward its marginal part. The lightness of the polished surface of the rocks was measured using the hue, saturation, lightness (HSL) tool in the Inkscape graphics editor. At the white part, plagioclase crystals are fine-grained and severely replaced by secondary minerals such as calcite, whereas plagioclase, at the dark gray part, is much larger than that in the white part and less altered. Turning to chemical composition, common feature cannot be found among three outcrops.
著者
原山 智
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.10, pp.373-389, 2015-10-15 (Released:2016-01-15)
参考文献数
65
被引用文献数
6 5

日本を代表する山岳景勝地である上高地は,槍・穂高連峰などの高峰に囲まれた谷底盆地である.日本では山岳地域の河谷の多くが急勾配で狭いV字谷であるのに対し,上高地盆地の勾配(大正池-徳沢間10 km)は8‰と小さく,盆地の幅は600-900 mと広い.この緩傾斜で幅広の谷底は,12.4 kaに焼岳火山群白谷山-アカンダナ火山の活動により岐阜県側に流下していた古梓川がせき止められ生じた古上高地湖が埋積されて形成された.槍・穂高連峰を構成する第四紀カルデラ火山-深成複合体を観察する上でも上高地では優れた巡検が可能である.第四紀花崗岩である滝谷花崗閃緑岩も,巨大カルデラを埋積したデイサイト質溶結凝灰岩も谷底の遊歩道沿いで観察可能である.また形成まもないカルデラ火山では観察不可能な,カルデラ内部の陥没カルデラ縁断層,カルデラ床やカルデラ壁崩壊角礫岩が観察できる点でも貴重なフィールドである.