著者
笹川 辰弥
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.658-673, 1971

はじめに, 量子力学における三体問題の歴史と現状を簡単に要約する. 三体問題の解説はすでにいくつも出ているので, この解説ではなるべくそれらと重複しないような観点から主として理論的背景を概説することにした; まず, 三体問題を解くための出発点として, Faddeevの式は何故必要であるか, またFaddeevの式は, 三体問題の方程式として唯一のあらわし方であるかという問題について解説する. 次に, 三体問題を積分方程式の次元数を一次元少なくして解くために用いられて来た分離可能なポテンシャルと, 一般のポテンシャルに対しても, 積分の方程式の次元数を一次元少なくして解くために用いることが出来る対称核の理論を解説する. 最後に, 三体問題の将来に関連して, クラスター模型を含む多体問題, 三体問題の精密化, 原子への応用などについて述べる.