著者
小金澤 碩城 井上 博喜 笹谷 孝英
出版者
農業技術研究機構近畿中国四国農業研究センター
雑誌
近畿中国四国農業研究センター研究報告 (ISSN:13471244)
巻号頁・発行日
no.4, pp.39-59, 2005-03
被引用文献数
1

海砂で栽培した10科36種の供試植物にOlpidium brassicae sensu latoおよびその類似菌の単遊走子嚢分離8株を接種し,一定期間後に放出される遊走子数を計測し,かつ根内の遊走子嚢と休眠胞子を観察することにより,寄生性を調査した。O. virulentusの分離株WOms-3は最も広い寄主範囲を示した。ついでLE-4,WT-1,TAK-1,F-1分離株の順であった。また,それぞれの分離株は異なる宿主特異性を有していた。これに対し,O. brassicaeの分離株CBG-3,YR-2とOlpidium sp.の分離株DKN-1の寄生範囲は比較的狭く,かつ類似していた。いずれの分離株も多くの植物の根に侵入可能で,感染が認められなかったのは4例のみであった。いずれの分離株もマクワウリ,スイカ,ササゲ,ダイズ,ナスとオクラでは増殖可能であった。いずれの分離株もセルリーと線虫抑止作物のクロタラリア,マリーゴールド,エンバクでは増殖しないかあるいは増殖量は少なかった。
著者
笹谷 孝英 野津 祐三 小金澤 碩城
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.24-33, 1998-02-25
参考文献数
38
被引用文献数
3

日本の異なる地域および植物から分離したインゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYMV)28分離株について, 判別植物の反応と血清反応を比較した。BYMVはインゲン15品種の反応で4つのPathotypeに分けることができた。Pathotype Iはインゲン品種の本金時のみに全身感染を示し, 他の品種には局部感染であった。Pathotype IIは本金時, ケンタッキーワンダーおよび他4品種に全身感染を示し, Pathotype IIIは本金時, ケンタッキーワンダー, マスターピースおよび他4品種に全身感染を示し, Pathotype IVは今回用いた15品種すべてに全身感染を示した。Pathotype II に属するBYMVはソラマメにおいて他のPathotypeに属すものより高い種子伝染性を示した。BYMVあるいはクローバ葉脈黄化ウイルス(ClYVV)に対する16種のモノクローナル抗体(MAb)を用いたTAS-ELISAで, BYMV28分離株には血清学的差異が観察され, 病原性とある程度一致したが, ポリクローナル抗体を用いたDAS-ELISAでは, 分離株間での顕著な差異は観察されなかった。MAb-1F3はPathotype I, II, IIIとClYVVの1株と反応した。MAb-2C4はPathotype IIのみと反応し, MAb-5F2は今回用いたBYMVとClYVVすべての株と反応した。MAb-2B4, -2C5, -3F9, -3F11, -4G8および-4H9はPathotype IIとIIIのすべてと, Pathotype IとIVの一部の株と反応した。MAb-1A2と-2H8はPathotype IIIとClYVV2分離株と強く反応した。以上より, 日本のBYMVは病原性および血清学的に変異に富んでおり, 4つのPathotypeに分かれることが明らかとなった。