著者
黒瀬 浩文 植田 浩介 大西 怜 小笠原 尚之 築井 克聡 陶山 俊輔 西原 聖顕 名切 信 松尾 光哲 末金 茂高 井川 掌
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.251-255, 2016-10-20 (Released:2017-10-24)
参考文献数
10

後腎性腺腫(metanephric adenoma)は極めて稀な腎良性腫瘍であり,画像診断では悪性腫瘍との鑑別が困難である.今回我々は,2例の後腎性腺腫を経験したので報告する.症例1は57歳,女性.検診時の腹部超音波検査にて右腎腫瘍を指摘され当科受診.造影CTにて右腎上極に造影早期相で造影増強効果は乏しく,経時的に不均一な造影効果を示す26mm大の腫瘤性病変を認めた.右腎細胞癌(cT1aN0M0)の術前診断にて腹腔鏡下右腎部分切除術を施行した.症例2は79歳,女性.両側乳癌術後の腹部CTにて偶発的に左腎腫瘍を指摘された.左腎中極腹側に不均一な造影効果を示す24mm大の腫瘤性病変を認めた.左腎細胞癌(cT1aN0M0)の術前診断にて腹腔鏡下左腎摘除術を施行した.両症例の病理組織診断は共に後腎性腺腫であった.これまでの後腎性腺腫に対する報告においては,術前腎細胞癌との鑑別が困難であり外科的切除が選択されていることが多い.画像検査にて本疾患などの良性腫瘍も疑われる際には,術前の腎腫瘍生検を含めた比較的低侵襲な診断ならびに術式を考慮することが肝要と思われる.