著者
守 一雄 鈴木 糺 井上 幸愛 箙 光 玉田 得三郎 築山 久一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1504-1510, 1967-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
9

脳卒中をはじめとして,中枢神経系障害の際消化管出血のみられることはしばしばあり,すでに19世紀前半、Rokitanskyらによりこのことはみとめられ,その後臨床的に,実験的に多くの報告があり,その原因についても諸説がある.一つには間脳・下垂体系を中心とする中枢神経刺激による消化管(とくに上部消化管)の潰瘍発生が出血の原因であり,また最近では卒中発作後の線溶系の変動,血中のplasmin活性の上昇に原因をもとめ,他方では卒中発作後一時的ではあるが,血液凝固能の亢進により消化管壁血管の血栓形成などの乏血による潰瘍発生が,その原因に考えられている.われわれは最近,当内科に入院加療した消化管出血を伴なつた脳出血5例(うちクモ膜下出血合併2例)を経験したので,文献考察をあわせここに報告する.