著者
篠原 拓也
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.38-48, 2015-08-31 (Released:2018-07-20)

わが国では児童虐待問題の深刻化に伴い種々の法改正がなされてきた.親子分離の必要性が強く説かれるなか,社会福祉学においても児童福祉の現場実践の規範に関わることであるから,児童相談所の介入に関する法整備のあり方についての議論を進めるべきである.本稿ではConvention on the Rights of the Child (=政府訳「児童の権利に関する条約」)に照らしつつ,児童相談所による親子分離について,子どもの権利への配慮のうえでどのような不備を抱えているのかを指摘した.公権力による親子分離を原則禁止しているArticle 9.1,特にjudicial review(司法審査)の文言について,客観的解釈のほか,主観的解釈・目的論解釈を含めて総合的に検討・考察した.その結果,司法による事前審査の必要性,いっそう厳密な調査の必要性など,児童相談所の権限行使についての一定の抑止力を確保しでおく必要性が指摘できた.
著者
篠原 拓也
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1-13, 2017-02-28 (Released:2019-02-15)
参考文献数
50

わが国の社会福祉学において人権は重要な意味を持つとされてきたが,人権論として主題化され,体系化されてきたとはいいがたい.本稿では社会福祉学における人権観の特徴と学問的位置を見定めることを試みた.社会福祉学における人権観の人権論における位置づけとしてはまずもって超実定法レベルの人権のうち「理念としての人権」にある.社会福祉学の人権の総論的な方向性は,わが国の一般的な人権感覚との親和性のなかで「福祉の理念としての人権」として充実させていくところにある.