著者
篠原 美都
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-10, 2019-03-01 (Released:2019-03-01)
参考文献数
18

精子幹細胞はほぼ個体の一生にわたって毎日莫大な数の精子を産生する。その基盤が幹細胞特有な現象である自己複製分裂である。精子幹細胞にウイルス遺伝子導入により固有の標識を施し精子形成への寄与の動態を調べたところ、その寿命は極めて長いことがわかった。一方精子幹細胞には休眠期がなく全てが分裂していた。これらは精子幹細胞が活発かつ長期の自己複製活性を持つことを示す。精子幹細胞を試験管内で長期に増幅する培養法(Germline Stem; GS細胞)により幹細胞を大量に調製することが可能となり、生化学的解析や遺伝子改変により精子幹細胞の自己複製制御機構などバイオロジーの解明に役立った。またGS細胞は子孫を作成できるため、新しい生殖工学発展の可能性を秘めている。今後この技術が幅広く非齧歯類にも展開し、不妊治療や疾患モデル動物の作成などに繋がることが期待される。