著者
篠崎 鉄哉
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.603-613, 2023-12-06 (Released:2023-12-06)
参考文献数
114

本総説では,津波堆積物に対し地球化学的手法を用いた研究をまとめ,津波堆積物の地球化学的特徴・挙動について整理し,今後の課題と併せて記述した.地球化学的手法が津波堆積物そのものではなく,海水流入の痕跡もしくは環境変化を見ているため,津波堆積物研究の中でも(1)地層中の津波堆積物の識別や(2)津波浸水域の高精度復元への貢献が期待されている.近年発生した巨大津波以降,津波堆積物の地球化学的特徴について多くの知見が報告されてきており,化学プロキシごとの挙動が徐々に明らかになってきた.一方,依然としてプロキシごとの保存ポテンシャルや堆積環境ごとの挙動に関しては十分な知見が得られているとは言い難い.今後は,現世・古津波堆積物の化学的特徴の把握に加え,新たなプロキシ・解析手段を適用が求められる.そのためには様々な研究分野との協働が必要不可欠であり,分野横断型研究を進めていくことが求められる.
著者
箱崎 真隆 坂本 稔 篠崎 鉄哉
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究では、先史時代の日本列島域の古環境変遷を「酸素同位体比年輪年代法」および「炭素14スパイクマッチ法」を用いて高い時空間解像度で復元する。特に①「鬼界アカホヤ噴火」の誤差0年決定、②過去6400年間の降水量と太陽活動の復元、③世界的寒冷化イベント(4.2-4.3kaイベント)の影響評価を目的とする。そのために、埋没木と遺跡出土木材の網羅的な酸素同位体比分析と炭素14分析を実施する。並行して新規の木材資料獲得と年代決定を行ない、より古い時代まで復元できる基盤形成を進める。本研究によって、日本列島域における古環境の形成と先史人類の適応について明らかにする。