著者
篠田 淳司
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.539-549, 2011-06-01
参考文献数
9

2002年の新エネルギー法政令改正に伴い,木質バイオマス発電施設建設への助成策が講じられ,企業や自治体,森林組合などによる施設整備が相次いだ。また,2003年にはRPS法が施行され,木質バイオマス発電施設の建設が加速された。さらに,セルロース系バイオエタノールなどの次世代バイオ燃料開発,バイオマス熱の利用拡大,バイオマス混焼による石炭火力発電などの木質バイオマスエネルギー利用に関する計画が幅広く進められている。不況などの影響で木質チップへの需要が緩和する事態が続いていたが,昨今,バイオマス混焼による石炭火力発電やバイオマス専焼の大型発電所などが計画されるようになり,再び需給がタイト化すると予想されている。森林資源のカスケード利用の観点からは,エネルギー利用は最終的な手段と位置づけられるが,昨今ではESCO,カーボンオフセット,CO<SUB>2</SUB>排出量取引などの新たな付加価値を付加したビジネスモデルも相次ぎ発表され,さらには木質バイオマス発電の固定価格買取制度の導入も見込まれている。こうした情勢変化は,最大の課題となっていた事業採算性にも期待をつなげる雰囲気を創り出しつつある。<BR>木質バイオマス利用による産業化はなかなか容易でないことも確かだが,一方ですぐにでもできることがあることも確かだ。CO<SUB>2</SUB>削減などを目的にいくつかの事業が動き出しているタイミングをとらえ,地域にバイオマス活用の道筋をつけていくことが必要だろう。2020年の木材自給率50%・低炭素社会実現を謳った『森林・林業再生プラン』の有効な促進策としても,強力に推進すべき時を迎えていると言えるだろう。