著者
篠田 隆行
出版者
國學院大學
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

【研究目的】学校法人会計基準の過渡期となる平成26年度(旧会計基準)と平成27年度(新会計基準)において、内部留保と収益性の開示による各大学の財務面における経営行動の変化を比較検証し、その影響を明らかにすることは、大学の財務運営研究における喫緊の課題である。そこで本研究では、「予算編成プロセス」という財務的側面にアプローチした。【研究方法】文部科学省による「学校法人の財務情報等の公開状況に関する調査結果について」を基に、大学を設置している学校法人合計666法人のうち660法人のHPを参照し、そこから得られる平成26年度と平成27年度の予算・決算数値を調査し、データ化して検証を行った。【研究成果】会計基準の変更という政策の影響と各学校法人が財務的視点においてどのように意思決定を変化させたかを事業活動収支計算書をもとに分析した。その中で以下の3点が主な成果として得られた。①666法人の財務データを調査するなかで、開示フォーマットを統一化すべきであることがわかった。これは、本研究の対象とできる法人数が303法人と約50%にしか至らなかった点から明白である。②予算に対して、決算の数値が好転する学校法人が多くあるが、一方で大幅に乖離していることもわかった。本来、予算は計画機能・統制機能・調整機能の3つの機能を有しており、その「計画機能」が著しく機能していないことがわかった。今後の経営を行う上で、改めて予算の「計画機能」を有効化する必要性が判明した。③会計基準の様式や学校の商慣行の関係で決算数値の経年検証が著しく欠如していることがわかった。これは、予算の視点が単年度となり、中長期的な計画との連関性が低くなり整合性がとれていないことも判明した。中期的視点での計画を予算に反映させ、単年度での財務コントロールをし、決算において大きな乖離を生じさせないように運営することが結果として安定した運営に繋がることが検証できた。