著者
山本 直樹 田中 哲文 大上 賢祐 籏 厚 三宅 陽一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.165-169, 2017-06-12 (Released:2017-06-08)
参考文献数
11

症例は74歳,男性.診断は下行大動脈瘤であった.下行大動脈置換術直後より脳脊髄液ドレナージを開始し,術当日の覚醒後に対麻痺症状のないことを確認した.しかし,術後1日目に対麻痺が出現した.脳脊髄液ドレナージの排液はなく,閉塞も考えられたため新たに脳脊髄液ドレナージチューブを挿入した.脳脊髄液の流出が確認されたが,脳脊髄液初圧10 cmH2Oと上昇はなかった.すぐにD-マンニトールと副腎皮質ホルモンの点滴を併用し,血圧維持管理を開始した.また,フェンタニルによる疼痛管理を中止しナロキソン持続静注を開始した.対麻痺発症から4時間後より徐々に症状は改善し,発症から24時間目で歩行器歩行が可能となった.下行大動脈置換後に遅発性対麻痺が出現したが,ナロキソン持続静注と血圧維持が著効した症例を経験したので,文献的考察を踏まえ報告する.