著者
細谷 肇 斉藤 健一 反町 裕 米本 貞夫
出版者
千葉県畜産総合研究センター
雑誌
千葉県畜産総合研究センター研究報告 (ISSN:13469746)
巻号頁・発行日
no.8, pp.77-82, 2008-11

早場米地帯として早生系品種の早期栽培が定着し、コンバイン型専用収穫機を所有するコントラクタにより飼料イネの収穫作業が1ヵ月強にわたって継続する地域において、収穫期間の各時期で長期貯蔵性を備えた高品質ロールベールサイレージの調製方法を検討した。2006年8月末からの1ヵ月強で23haを収穫した中で、最前期の8月28日刈取りのヒメノモチ(食用品種)、9月21日刈取りのはえぬき(食用品種)、最後期の9月28日刈取りの夢あおば(飼料専用品種)について、乳酸菌(畜草1号)添加の有無を設定し、収穫から10ヵ月及び13ヵ月貯蔵のサイレージ発酵品質とかびの発生状況を調査した。ヒメノモチは適期刈りの黄熟期、はえぬきと夢あおばは刈遅れの完熟期で、前2品種は天候に恵まれた収穫、夢あおばは直前の大雨を経た収穫となった。ヒメノモチとはえぬきの発酵品質は全般的にV-SCOREが良好と評価され、乳酸菌添加によりpHが低下、乳酸含量が増加、酪酸含量が減少し、品質がさらに向上した。刈遅れのはえぬきは、乳酸菌添加では貯蔵期間による品質の差がなかったが、無添加では13ヵ月貯蔵で酪酸含量が増加し長期貯蔵での品質低下が懸念された。夢あおばは添加の有無にかかわらず、同じように乳酸発酵が進行した一方で、酪酸含量が多く発酵品質が劣り、材料草への雨水と土の付着が影響したものと考えられた。かびの発生による廃棄ロスは、いずれの品種も乳酸菌添加の有無と貯蔵期間の違いによる有意な差が認められなかった。いずれの収穫時期においても好条件の適期刈りに近づけるため、秋雨等の季節的状況や農業用水の管埋を考慮しながら、品種の早晩性を踏まえた早場米地帯の飼料イネ作付け体系確立が望まれた。