著者
宮崎正浩・籾井まり 籾井 まり
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.147-163, 2009-09-15

人類の存続の基盤である生物多様性の損失が加速化している.このため,生物多様性条約(1992年)が採択されるなど,世界的に政府や市民社会の主導によりその保全への取り組みが行われているが,十分な効果は上げられていない.このため,最近では,生物多様性に依存するとともに大きな影響も与えている企業がその社会的責任(CSR)として自主的に保全活動を行うことが期待されている. 本研究の目的は,環境の持続可能性の視点から,CSRとしての企業の活動が生物多様性の保全にどの程度貢献するかについて分析し,それをより有効なものとするためのNGOや政府の役割について明らかすることである. 本研究の結果,環境の持続可能性の視点からは,生物種の絶滅リスクを高めることを防止する必要があるが,これを達成するためには,現状のような企業のCSRとしての自主的取り組みでは不十分であり,企業が生物多様性に与えている影響を定量的に評価し,その公表を法的に義務化するとともに,生物多様性のネットでの損失をゼロすること(ノーネットロス)を目標とした政府の規制や,生物多様性へ影響を与える原材料の国際取引において生物多様性に配慮し持続的な管理がされた原材料のみを適法とする法的拘束力のある国際条約の検討が必要であると結論付けた.