著者
大嶺 卓也 粟澤 剛 山口 さやか 粟澤 遼子 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.187-191, 2019

<p>68 歳,男性。初診の 10 年前に徐々に拡大する後頭部の皮下腫瘤を自覚していた。部分生検の結果,隆起性皮膚線維肉腫(dematofibrosarcoma protuberans:DFSP)の疑いで当科を紹介され受診した。当科初診時,後頭部皮下に 4.5×1.5 cm の皮下腫瘤を触知した。可動性は不良で,表面皮膚の色調変化や萎縮はなかった。頭部造影 MRI で腫瘍は後頭部皮下に境界明瞭に描出され,STIR 像で高信号を示した。病理組織学的には,紡錘形の腫瘍細胞が皮下組織において比較的均一に増殖し,花むしろ構造を呈しており,腫瘍細胞は核異型に乏しく,核分裂像はほとんど存在しなかった。免疫組織化学的には腫瘍細胞はCD34 がびまん性に陽性であった。腫瘍の凍結組織から抽出した RNA を用いて RT-PCR を行い,<i>COL1A1-PDGFB</i> の融合遺伝子を検出した。以上より皮下型 DFSP と診断した。皮下型 DFSP の報告は稀であるが,<i>COL1A1-PDGFB</i> 融合遺伝子を検出したことから,皮膚に発生した DFSP と腫瘍発生学的に同じ発癌機序によることが示唆された。</p>
著者
砂川 文 山城 充士 粟澤 遼子 粟澤 剛
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.31-34, 2019

<p>36 歳,女性。自宅の冷蔵庫で右足を打撲した後,同部の疼痛が次第に増強し発熱もみられた。翌日の当科初診時には右足全体に著しい疼痛を訴え,外果には発赤,腫脹,熱感を認めた。高熱と炎症反応の高値を伴っており,LRINEC(laboratory risk indicator for necrotizing fasciitis)score は 4 点で,入院の上,蜂窩織炎として抗生剤加療を開始した。しかし,半日後にはショック状態となり,炎症反応の更なる上昇と腎機能の悪化,凝固系の延長を来たし,LRINEC score は 8 点に上昇した。患部には水疱が出現,試験切開所見から壊死性筋膜炎と診断し,緊急デブリードマンを施行した。起因菌は <i>Streptococcus pyogenes</i> であり,アンピシリン,クリンダマイシンの全身投与を 2 週間継続し,免疫グロブリン療法を併用した。 その後は感染の拡大を起こすことなく,第 47 病日に植皮術を施行,患肢は大きな後遺症を残すことなく,温存できた。A 群 <i>β </i>溶血性連鎖球菌は,基礎疾患を持たない健常人に単独で壊死性筋膜炎をおこし得る。 また一部の症例では致死率の高い劇症型溶血性連鎖球菌感染症(STSS)へと発展する。自験例は,A 群 <i>β </i>溶血性連鎖球菌による壊死性筋膜炎からショック状態に至ったものの,早期診断と治療開始により,患肢の温存と救命に成功した。本疾患は迅速かつ注意深い対応を要するため,経験症例を共有する必要があると考え報告する。</p>