著者
山口 さやか 高橋 健造
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.10, pp.2305-2311, 2017-09-20 (Released:2017-09-22)
参考文献数
14

日本ではアタマジラミ症に対する治療薬として,ピレスロイド系薬剤のフェノトリン0.4%配合の市販薬のみが認可されている.欧米ではこのピレスロイド系薬剤の無効なアタマジラミが蔓延し,沖縄県でも蔓延していることがわかった.本稿では抵抗性の機序や海外のアタマジラミ治療薬,沖縄県内の取り組みや実際的な駆除法を解説する.ノーベル賞受賞者の大野智博士が開発したイベルメクチンは,抵抗性アタマジラミにも有効であるが,日本では保険適応がなく使用出来ない.
著者
山口 さやか 高橋 健造
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.12, pp.2513-2517, 2019-11-20 (Released:2019-11-20)
参考文献数
12

アタマジラミは,市販されているピレスロイド製剤を用いて家庭内で駆虫してきたため,これまで皮膚科医が介入する機会はほとんどなかった.しかし近年,ピレスロイド製剤で駆虫できない難治性アタマジラミ症が世界中で広がり,日本でも遭遇する機会が増えている.アタマジラミの特徴,治療法,感染対策について解説するとともに,ピレスロイド抵抗性アタマジラミの耐性化機序や日本の現状と,今後期待される薬剤について紹介する.
著者
高井 彩也華 安村 涼 山口 さやか 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.455-458, 2017

<p>29 歳,男性。2009 年 12 月,マラソン大会の出走直前に膨疹,悪心,嘔吐が出現し,近医にてアナフィラキシーと診断された。以後,2 カ月間で5 回,腹痛,膨疹,悪心,嘔吐,時に血圧低下などの,蕁麻疹,アナフィラキシー症状を繰り返した。4 回目と 5 回目の症状の出現前日,夕食に納豆を摂取していたため,納豆による遅発性アナフィラキシーを疑った。皮膚プリック-プリックテストでは納豆が陽性であった。納豆摂取誘発試験では摂取 6 時間後に血圧低下を伴う咽頭違和感,膨疹が出現し,納豆によるアナフィラキシーと診断した。納豆摂取を避けてから,現在まで症状はみられていない。</p>
著者
堀口 亜有未 宮城 拓也 山口 さやか 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.289-292, 2019

<p>80 歳,男性。約 4 カ月前から体幹四肢に瘙痒を伴わない浮腫性紅斑と皮膚の硬化,疼痛があり,当科を受診した。手足を除く上下肢に左右対称性に皮膚の硬化と皮膚表面に光沢があり,下肢には敷石状に凹凸があった。爪上皮出血点や後爪郭の血管拡張,レイノー症状はなかった。MRI T2 強調像で大腿二頭筋膜の肥厚と高信号があり,病理組織検査で筋膜の肥厚と筋膜に併走するように帯状の細胞浸潤があり好酸球性筋膜炎と診断した。プレドニゾロン(PSL)40 mg/日で治療を開始したが,PSL を漸減する過程でアルドラーゼ値の上昇があったためメトトレキサート(MTX)を併用した。以後,皮膚硬化は改善,アルドラーゼ値は低下し,PSL を漸減できた。現在まで MTX による副作用はない。ステロイド抵抗性の好酸球性筋膜炎において,MTX は有用であると考える。</p>
著者
與那嶺 周平 宮城 拓也 新城 愛 下地 志月 山城 充士 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.351-356, 2021

<p>80 歳台男性。全身に広がる血疱を伴う紅斑と紫斑で当科を受診した。血液検査でヒト T 細胞白血病ウイルス 1 型(Human T-cell leukemia virus type 1,HTLV-1)抗体陽性で,成人 T 細胞性白血病・リンパ腫(Adult T-cell Leukemia/Lymphoma,ATL)様細胞 6360/μl,可溶性 IL-2 レセプター(sIL-2R)22,545 U/ml と高値であり,CT 検査で多発リンパ節腫大と脾腫があった。皮膚生検で真皮血管周囲に異型リンパ球浸潤があり,免疫組織化学的に浸潤細胞は CD3,CD4,CD7,CD25,CCR4 陽性であった。左鼠径リンパ節生検でも異型細胞浸潤があった。急速に呼吸状態が悪化し,FiO<sub>2</sub> 0.6 でSpO<sub>2</sub> 94%と呼吸不全となった。CT 検査で小葉中心性陰影やスリガラス影があり,胸水細胞診で ATL 細胞を多数確認し,ATL 急性型と診断した。年齢や既往,全身状態から,多剤併用化学療法ではなく,メチルプレドニゾロン 40 mg/day とエトポシド 25 mg/day の内服を開始したが効果は不十分であった。モガムリズマブの投与追加により,呼吸状態は改善し,皮疹と末梢血中 ATL 様細胞は消失し,sIL-2R も 346 U/ml と低下した。ATL は近年,骨髄移植に適さない高齢発症例が増えており,治療戦略に苦慮するが,経口化学療法とモガムリズマブによる治療を組み合わせることで良好な治療結果を得られた 1 例を経験したため報告する。</p>
著者
金子 栄 山口 道也 日野 亮介 澤田 雄宇 中村 元信 大山 文悟 大畑 千佳 米倉 健太郎 林 宏明 柳瀬 哲至 松阪 由紀 鶴田 紀子 杉田 和成 菊池 智子 三苫 千景 中原 剛士 古江 増隆 岡崎 布佐子 小池 雄太 今福 信一 西日本炎症性皮膚疾患研究会 伊藤 宏太郎 山口 和記 宮城 拓也 高橋 健造 東 裕子 森実 真 野村 隼人
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.1525-1532, 2021

<p>乾癬治療における生物学的製剤使用時の結核スクリーニングの現状について西日本の18施設を調査した.事前の検査ではinterferon gamma release assay(IGRA)が全施設で行われ,画像検査はCTが15施設,胸部レントゲンが3施設であった.フォローアップでは検査の結果や画像所見により頻度が異なっていた.全患者1,117例のうち,IGRA陽性で抗結核薬を投与されていた例は64例,IGRA陰性で抗結核薬を投与されていた例は103例であり,副作用を認めた患者は23例15%であった.これらの適切な検査と治療により,結核の発生頻度が低く抑えられていると考えられた.</p>
著者
山城 充士 山口 さやか 大嶺 卓也 内海 大介 山本 雄一 高橋 健造
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.12, pp.2641-2645, 2017

<p>14歳,男性.スキーをした翌日に眼瞼,頬部,手背に疼痛を伴う発赤や腫脹を生じた.血中プロトポルフィリン高値,光溶血現象及び蛍光赤血球陽性,肝障害があり骨髄性プロトポルフィリン症と診断した.フェロケラターゼ遺伝子にナンセンス変異(c.361C>T,p.R121<sup>*</sup>)と低発現アレル(IVS3-48C)の複合ヘテロ接合を同定した.父方の祖母,従姉妹らも同様の複合へテロ接合を有していた.一方,無症候の父親と叔母は,ナンセンス変異をヘテロ接合で保持していたが,対側アレルは正常アレル(IVS3-48T)であった.</p>
著者
岩元 凜々子 佐久川 裕行 宮城 拓也 山口 さやか 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.22-25, 2021

<p>特に既往症のない 79 歳,男性。四肢に環状の紅斑が出現し,その後,胸痛,多発関節炎,有痛性皮下結節,発熱,リンパ節腫脹,上強膜炎が次々に生じ,最終的に,初発の皮膚症状の 4 カ月後に生じた耳介腫脹により,再発性多発軟骨炎の診断に至った。気道や心病変は合併しておらず全身状態は良好であるが,ステロイド内服と免疫抑制剤の併用では,いまだ病勢はコントロールできていない。<br>再発性多発軟骨炎は,軟骨組織を主体に多彩な全身性の自己免疫性の臨床症状を呈し,寛解再燃を繰り返す。半数以下の症例に皮疹を伴うが,皮疹自体も多様で特異的なものはない。自験例の様に,軟骨炎や鼻軟骨炎などの典型的な症状がない病期での診断は非常に困難である。</p>
著者
小松 恒太郎 山口 さやか 内海 大介 大嶺 卓也 砂川 文 粟澤 剛 大城 健哉 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.455-459, 2020

<p>壊死性軟部組織感染症は比較的まれな疾患である。我々は 6 カ月間で 4 例を経験し,3 例を救命できた。4 例の初診時主訴は多彩であり,明らかな感染徴候がない例,発熱・嘔吐・下痢など急性胃腸炎様症状を呈した例など,発症初期には軟部組織感染症を疑うことができなかった症例が存在した。1 例は搬送時に全身状態が悪くデブリードマンを行えず死亡,3 例は緊急デブリードマンを行い救命できた。診断には A 群 β 溶血性連鎖球菌抗原キット検査が全例陽性であり非常に有用であった。血液検査では好酸球数の著明な低下と CRP 高値が 4 例に共通していた。A 群 β 溶血性連鎖球菌による壊死性軟部組織症は,初期診断が困難な症例があるが,治療が遅れると致死率が高く,早期診断が重要である。</p>
著者
砂川 文 山口 さやか 深井 恭子 山本 雄一 粟澤 剛 内原 潤之介 高橋 健造
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.12, pp.2567-2571, 2020

<p>症例1は35歳男性,5年前より好酸球増多症に対してプレドニゾロンやシクロスポリンで加療していたが,誘因なく四肢に紫斑と腫脹が出現した.症例2は36歳女性,誘因なく左下腿と足関節部に紫斑が出現した.2例ともAPTT延長,第VIII因子活性低下,第VIII因子インヒビター力価上昇があり,後天性血友病Aと診断し,プレドニゾロン内服を開始した.いずれの症例も治療に反応し,第VIII因子インヒビターは陰性化した.後天性血友病Aは出血による死亡例もあり,誘因なく突然出現した斑状出血の場合,本症を念頭に入れる必要がある.</p>
著者
深井 恭子 山口 さやか 大嶺 卓也 山城 充士 眞鳥 繁隆 高橋 健造
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.393-396, 2017-05-01

要約 27歳,女性.オコゼ刺傷による右下腿皮膚潰瘍に対して,ゲーベン®クリームを外用していたが難治のため当科を紹介受診した.潰瘍周囲に紅斑,丘疹が広がり,ゲーベン®クリームの外用を中止したところ,潰瘍部の肉芽形成が良好となり植皮術を行った.術後,顔や植皮部にヒルドイド®ソフト軟膏を外用し,瘙痒が出現していたが不定期に外用を続けていた.約1年後に全身に紅斑が拡大し,再度当科を受診した.パッチテストでは,ゲーベン®クリーム,ヒルドイド®ソフト軟膏,これらに共通した添加物であるパラベンが陽性だった.自験例では,最初の接触皮膚炎の診断時に原因成分までは特定しなかったため,パラベン含有薬剤の外用を継続し経過が長期化した.パラベンは身近な医薬品,化粧品に数多く含まれており,難治性の皮膚炎や皮膚潰瘍では,パラベン類へのアレルギーも念頭に置きたい.
著者
佐久川 裕行 山口 さやか 山城 充士 苅谷 嘉之 新嘉喜 長 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.94-98, 2020

<p>31 歳,女性。16 歳頃より自覚していた左足底の黒色斑が,妊娠 25 週頃より急速に増大し,隆起してきたため,妊娠 30 週で当科を紹介された。初診時,左足底に 18×10×2 mm の潰瘍を伴う黒色結節があり,悪性黒色腫を考え 10 mm マージンで全切除生検を行った。病理組織学的には,表皮真皮境界部を主体として,豊富なメラニン顆粒を含有し核小体の目立つ異型細胞が胞巣状に増殖しており,末端黒子型の悪性黒色腫と診断した。Tumor thickness は 3 mm,深部断端,側方断端は陰性であった。pT3bNXMX stage Ⅱb 以上の診断で,早期の全身検索および補助化学療法が必要と判断し,妊娠 32 週 4 日に経膣分娩で早期娩出した。胎盤や出生児に転移所見はなかった。出産後,全身検索,センチネルリンパ節生検を行い,末端黒子型悪性黒色腫 stage Ⅱb(pT3bN0M0)と診断し,術後の補助化学療法として,DAV-Feron 療法を 3 クール行い IFN-<i>β </i>の局注射療法を継続している。術後 4 年が経過しているが,再発,転移はない。</p>
著者
山口 さやか 高橋 健造
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.12, pp.2513-2517, 2019

<p>アタマジラミは,市販されているピレスロイド製剤を用いて家庭内で駆虫してきたため,これまで皮膚科医が介入する機会はほとんどなかった.しかし近年,ピレスロイド製剤で駆虫できない難治性アタマジラミ症が世界中で広がり,日本でも遭遇する機会が増えている.アタマジラミの特徴,治療法,感染対策について解説するとともに,ピレスロイド抵抗性アタマジラミの耐性化機序や日本の現状と,今後期待される薬剤について紹介する.</p>
著者
大嶺 卓也 粟澤 剛 山口 さやか 粟澤 遼子 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.187-191, 2019

<p>68 歳,男性。初診の 10 年前に徐々に拡大する後頭部の皮下腫瘤を自覚していた。部分生検の結果,隆起性皮膚線維肉腫(dematofibrosarcoma protuberans:DFSP)の疑いで当科を紹介され受診した。当科初診時,後頭部皮下に 4.5×1.5 cm の皮下腫瘤を触知した。可動性は不良で,表面皮膚の色調変化や萎縮はなかった。頭部造影 MRI で腫瘍は後頭部皮下に境界明瞭に描出され,STIR 像で高信号を示した。病理組織学的には,紡錘形の腫瘍細胞が皮下組織において比較的均一に増殖し,花むしろ構造を呈しており,腫瘍細胞は核異型に乏しく,核分裂像はほとんど存在しなかった。免疫組織化学的には腫瘍細胞はCD34 がびまん性に陽性であった。腫瘍の凍結組織から抽出した RNA を用いて RT-PCR を行い,<i>COL1A1-PDGFB</i> の融合遺伝子を検出した。以上より皮下型 DFSP と診断した。皮下型 DFSP の報告は稀であるが,<i>COL1A1-PDGFB</i> 融合遺伝子を検出したことから,皮膚に発生した DFSP と腫瘍発生学的に同じ発癌機序によることが示唆された。</p>
著者
深井 恭子 小松 恒太郎 松尾 雄司 林 健太郎 苅谷 嘉之 宮城 拓也 山口 さやか 照屋 操 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.115-119, 2019
被引用文献数
1

<p>症例 1:87 歳,男性。18 歳時に L 型ハンセン病と診断された。5 年前から左足背に皮膚潰瘍があり,次第に隆起してきた。初診時,左足背に腫瘤があり,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し,左下腿切断術を施行した。症例 2:54 歳,男性。20 歳で L 型ハンセン病と診断された。43 歳頃より右第1 趾に皮膚潰瘍があり,47 歳時,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し右下腿切断術を施行した。30 代から左足底には胼胝があり,52 歳頃に皮膚潰瘍が出現した。54 歳時,潰瘍が増大し,病理組織検査にて有棘細胞癌と診断し,左第1~3 趾切断術を行った。術後約 3 カ月で術後創部から再発,肺に転移し永眠した。ハンセン病の慢性潰瘍は瘢痕癌の発生母地となる。瘢痕癌は他の有棘細胞癌より予後不良であり,ハンセン病の後遺症による神経障害で生じた難治性潰瘍は注意深く経過観察する必要がある。</p>