著者
吉田 宗平 河本 純子 紀平 為子
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成10年〜11年において、まず第1に、紀伊半島全体のALS患者頻度の動向と多発地の状況を把握するため、1973-94年紀伊半島三県の人口動態死亡票データにより死亡頻度の変遷を解析した。この22年間で紀伊半島三県において799例(男性472/女性327名 ; 男女比1.44 : 1)を得た。死亡年齢の高齢化と共に、平均年間死亡率(年齢調整)は和歌山県では最高値から漸次低下を示し、紀伊半島全体としては近年0.9人/10万人へと均一化する傾向が見られた。しかし、和歌山県牟婁郡ではなお高率が保たれていた。第2に、和歌山県における河川・飲料水、特に多発地区古座川町と対照地区串本町大島を中心に、主な微量元素の含有量を分析した。古座川水系の河川・上水道のCa,Mg含有量(平均Ca2.3, Mg0.75ppm)は最も低く、この傾向は日高郡以南のALS多発地帯に見られるが、紀伊半島最南端の離島串本町大島の井戸水のみは(Ca13.3, Mg4.3ppm)と全国平均レベル(Ca8.8, Mg1.9ppm)を上まわった。第3に、house-to-house studyを施行するため、特定疾患医療受給者情報を利用し、地域医療機関や保健所の協力を得て古座川・大島地区の予備調整を行った。1990-99年の10年間で古座川町では、ALS2名、PDC-ALS2名の計4名の発症が確認された。このうちPDC-ALS2例の家系には、共にALSの発症が確認され家族性例であることが判明した。過去この地区にはPDC-ALSの発症の記載はない。古座川の平成12年1月1日現在の時点有病率は、71.5人/10万人であったが、大島にはなお患者は確認されていない。現在、当初のALSのみを対象としたhouse-to-house surveyの計画を再考して、PDCを含めた家系および環境要因分析を中心とした研究課題として考慮中である。