著者
紫野 正雄 林 繁利 市原 伸恒
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.331-333, 2005-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

チワワ種雌犬が, 難産の末3匹を初産分娩したが, その後のX線検査によって子宮外に2胎のミイラ化胎子が認められた. その後無処置の状態で分娩後2回日の発情でふたたび妊娠した. 妊娠末期にX線検査を行ったところ, 4胎の正常胎子とともに2胎のミイラ化胎子が確認された. 正常胎子の摘出のための卵巣子宮全摘出を行い, さらに腹腔内ミイラ化胎子の摘出も行った. 摘出右子宮の先端に脱出跡と思われる組織学的所見が得られた. また, 摘出ミイラ化胎子についてX線検査による骨格測定を行ったところ, 妊娠末期の胎子と一致した. 以上の結果から, このミイラ化胎子は前回の分娩時の難産のおりに子宮破裂口から腹腔内に脱出し, 長期間腹腔内に遺残し, その後の子宮修復に伴い重複妊娠した事が示唆された.