著者
細田 芳徳
出版者
日本弁理士会
雑誌
別冊パテント (ISSN:24365858)
巻号頁・発行日
vol.75, no.27, pp.199-228, 2022 (Released:2022-11-24)

内在特性を備えた物の新規性や当該内在特性により導かれる用途発明の新規性は,化学・バイオ分野に特有な問題であり,なかでも当業者にとって認識困難な内在特性に対する扱いには,従来から種々の立場の解釈があり,見解も分かれやすい。すなわち,内在特性について出願後に追試実験データを参酌して判断することの可否や,例えば,美白化粧料が公知の場合に,同じ成分からなるシワ抑制用化粧料の発明に新規性を肯定することの是非は,議論の多いところである。今回,技術的に未解明な要素が比較的多い免疫関連分野の発明に関する最近の裁判例(IL-17 産生の阻害事件,IL-2 改変体事件,及びワクチン組成物事件)を例にして,特に,用途発明に焦点をあてて,これらの問題点を検討した。本稿では,従前からの見解と対比検討をしながら,多少異なる視点から,新規性についての見解の提示を試みた。