- 著者
-
細谷 祐子
- 出版者
- 日本重症心身障害学会
- 雑誌
- 日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.2, pp.256, 2017
はじめに 鳥取県立総合療育センターでは平成26年度に利用者・職員合わせて9名のノロウイルス陽性者を出した。このことを受けて感染対策委員会では、感染性胃腸炎発症時のマニュアルの作成、手指消毒の徹底、院内ラウンド、研修会の開催等対策の徹底を図った。以後、集団発生はなく、単発発生で終息できている。集団発生の事例から、施設内での標準予防策の不十分さや多職種で感染対策を実施することの難しさを痛感した。平成28年度から多職種を巻き込んだ感染対策のシステム化を図った結果、継続的に成果につながる仕組みの構築につながったので報告する。 感染対策委員会活動の振り返りと課題 1.正しい知識に基づくマニュアルの整理と標準予防策の徹底の不備。 2.院内ラウンドの実施が不定期。3.研修会の開催が計画的でない。 4.医療職だけでなく福祉職もケア提供者となる。感染対策に対する知識に差がある。5.感染対策が定着しない。 活動内容のシステム化 1.標準予防策の徹底等の業務の規定と明文化。2.PDCAサイクルの徹底。3.活動内容毎に多職種からなるチーム編成。4.教育と育成。 考察 標準予防策(個人防護具の装着)についての自施設内の規定を定め明文化することで、職員への周知と業務の徹底を図ることができた。また、PDCAサイクルを意識することで、委員会メンバーで協働し、継続的に改善を図ることができた。活動内容毎にチーム編成したことは、職種が異なっても感染対策に参加している協働意欲の向上につながった。多職種で構成される自施設においての感染に対する知識の差は、わかりやすい研修や可視化できる工夫で改善を図ることができた。それぞれの活動は「院内感染ゼロ」の共通目的に向かって機能させるために有効な方法であった。 まとめ 職種の異なる集団を組織として機能させ、患者によりよい成果をもたらすためには、「共通目的をもつこと」「伝達しあうこと」「協働」が不可欠である。