著者
木方 展治 結団 康一
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.581-589, 1992-10-05
被引用文献数
1

神奈川県足柄平野内の扇状地にしけん区を設け、深さ130cm までの土壌水を経時的に採取して硝酸態窒素濃度を調べた結果、以下のことがわかった。1)下層(100〜130cm)の土壌水硝酸態窒素濃度の最大値と平均値は,扇央上部の延沢では3.66 mgL^<-1>と0.705 mg L^<-1>であった.扇端上部の透水性の非常によい宮台では施肥後に最大値24.6mg L^<-1>を示したが,平均値は1.35mg L^<-1>と延沢を上回るもののそれほど高い価を示さなかった.先端下部の透水性が悪く,地下水位の高い曽比では最大値0.684mg L^<-1>,平均値0.041mg L^<-1>と低い値であった.2)水田に流入した窒素量から水田下層より浸透水として流出する賞賛対窒素量を差し引いた値は,延沢では2〜7kg ha^<-1>とかんがい期,非かんがい期ともわずかに0を上回った.宮台ではかんがい期に年間施用窒素量の50%近い硝酸態窒素が浸透しており,差し引き値は-20kg ha^<-1> year^<-1> を示したが,茶園の-270〜-280kg ha^<-1>year^<-1>に比べて1/10以下であった.3)曽比のような湧水地帯の湿田は脱窒機能が大きく,扇状地浸透水のうち,扇端部に浸出してくる地下水中硝酸態窒素を浄化する働きをしていることが推測された.