- 著者
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緒方 誠
岩田 訓
後藤 和彦
- 出版者
- 日本地球惑星科学連合
- 雑誌
- 日本地球惑星科学連合2016年大会
- 巻号頁・発行日
- 2016-03-10
桜島の大正大噴火の際、1914年(大正3年)1月12日18時28分頃に発生した地震については、当時の震度分布や被害等から鹿児島湾に震源があり、その規模はM7.1というのが現在の通説となっている(Omori(1922)、宇津(1982:気象庁カタログ採用)や、阿部(1981))。今般、大正噴火から100年が経過し、次の大正級噴火が近づく中、現存する地震記象紙や原簿・文献等を再点検し、現在気象庁で使用している速度構造(JMA2001)を用いて震源位置の再評価を試みることにした。この地震については、当時、鹿児島測候所に設置されていたグレー・ミルン・ユーイング式地震計の地震記象紙が現存しており、強震動の初動部分のみ記録し、その後は記録針が振り切れて記録は途絶えている。今回の調査では波形をデジタイズし、初動部分の解析を行った。その結果、初動から期待される震央の方向は、鹿児島測候所(鹿児島市坂元町)から見て南東象限であることが明らかとなった。次に、文献や原簿等に記載された日本国内(一部当時の統治領含む)のS-P時間(初期微動継続時間とされているもの)について収集・整理を行った。この際、地震記象紙が現存しているものについては、可能な限りP相、S相の読み取りを行った。そして、収集したS-P時間データを用いて震源決定を行った。S-P時間を収集した観測点数は20数点となったが、原簿や文献、読み取り値により同一観測点で複数の値が存在し、その値が大きく異なる場合もあるため、後藤(2013)が1911年喜界島近海の巨大地震の震源再評価で用いた手法を参考に震源計算に使用する観測点やS-P時間の選別を行った。最終的には、9観測点のS-P時間データで震源計算を行い、鹿児島市付近に震源が求められた。なお、震源計算には、気象庁カタログ(過去部分)の改訂作業に使用しているツール(走時表は、気象庁が現行の震源計算に用いているJMA2001準拠であるが、観測点の距離による重みは観測網を考慮しJMA2001前に使用していたもの)を使用している。本調査には、気象官署が保管している地震記象紙を地震調査研究推進本部が(公財)地震予知研究振興会に委託して行っている強震波形収集事業で高解像度スキャンしたファイルのほか、国立国会図書館、東京大学地震研究所所有の資料を使用しました。