著者
縄井 清志 仙波 浩幸
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E3P1239, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】本研究は、機械・工学的領域を研究する理学療法士に対して、機械・工学的支援の問題点と期待をまとめることを目的に行った.【方法】対象は、第43回日本理学療法学術大会における演者および座長である.対象者の選定は、「ロボット」「車いす」などの機械・工学的なキーワードのある研究とその座長とした.方法は、公演中に質問を行うことと、公演後に質問の了解が得られた研究者に面接調査を行った.質問内容は、「理学療法士の視点からどんな機械が望まれますか?」「工学系の人と連携するにはどうしたらいいですか?」などである.情報の処理は、聴取したコメントの内容について、機械がICFの領域のどこに影響を与えるか、で分類した.具体的には、「環境因子」に含まれる機械が、「心身機能・構造」に与える影響、「活動」に与える影響、「参加」に与える影響、「個人因子」に与える影響にコメントを分類した.また、医学と工学の連携に関するコメントは「管理・連携」としてコメントを分類した.なお、重複するコメントも加算した.【結果】研究者16名から話を伺えた.また、研究者の資料からも情報を収集した.生活機能では、活動領域への支援のコメントが最も多かった.また、素材の工夫や小型化など、機械自体への改善の要望も多かった.医療と工学の連携については、医療職はクライアントの代弁者として工学専門家に積極的にリクエストしていくことの必要性や、キーパーソンの必要性、常設の機械展示場の希望などがあった.【考察】健康は、単に病気ではないということではなく、人機能と環境等が調和された穏やかな状態(well-being)である.この人機能と環境を調和させるのに技術が貢献する.「技術」は、「人と万物との共生」と「人と万物との調和」を目指すものであることから、本研究では、健康の概念であるICFを使って医療福祉領域の機械工学的課題の整理を試みた.結果は、自立に向けた活動領域への機械工学的支援への要望が多かった.また、心身機能面や参加へのリクエストがないことから、医師や社会福祉士などとも連携して医工連携してゆく必要性が示唆された.さらに、認知機能の低下した人も安全に使用できるように、モノ自体がその使い方を強く示したデザインや機能も必要であろう.今回の調査では医工連携を推進するにはキーパーソンが重要であるとのコメントが多かった.しかし、このキーパーソンの機能はICFには認められないため「管理・連携」の領域を加えてm-ICF modelを創作した.健康を他職種と推進する上で求められる概念であると考えられる.