著者
織田 薫
出版者
目白大学
雑誌
目白大学経営学研究 = Mejiro Journal of Managemant (ISSN:13485776)
巻号頁・発行日
no.18, pp.27-44, 2020-02-29

旧財閥のうち、安田財閥は、三井、三菱、住友と並んで四大財閥の一つに数えられるが、安田財閥は、傘下事業の大宗を銀行、保険などの金融関係が占めた点で他の財閥と大きく異なった。安田財閥は、総合財閥というよりも、むしろ、総合金融業と言うべき存在であり、安田財閥の持株会社であった安田保善社は、1997年に純粋持株会社が解禁される以前に我が国に唯一存在した金融持株会社であったと言える。安田保善社の経営は、時代により多少の強弱はあったものの、中央集権的であったことを特徴としている。中央集権体制を支えていたものは、①関係行社役員及び役職員の人事権確保 ②稟議・報告制度等に基づく強い関係行社管理 ③グループの一体感を高める諸施策にあったと考えられる。特に、中央集権体制を維持しつつ、一方でグループとしての求心力を高めるため、当時としては考えられる限りのグループ一体化策を実行しようとした硬軟織り交ぜた姿勢については、日本的経営という視点に立つ場合、極めて参考になる点が多い。