著者
續 ユキ子
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.107-111, 2018-12-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
6

2017年5月23日,山梨県北杜市でジョウビタキの巣を発見した.この巣の雌親には環境省標識調査用足環が付いており,写真撮影を行って足環番号を読み取ったところ,この個体は2016年に,繁殖場所から約220m離れた地点で,巣内雛で放鳥された個体と判明した.ジョウビタキは冬鳥だが,近年日本各地から繁殖報告が相次ぎ,繁殖分布の拡大が示唆されている.しかし,国内繁殖個体の越冬地や渡り経路,幼鳥の分散といった基礎的な生態は全く解明されていない.本報告は,日本で生まれたジョウビタキが,巣立ちの翌年に自らが巣立った場所の至近で繁殖を行った確実な記録として,今後の個体群動態を推測するうえでも貴重なものであろう.