著者
羽根 裕子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

<目的> 教員養成大学家庭科選修、専攻学生の授業における受講意欲向上を目指す取り組みを続けてきた。将来、教師という社会的にも重要な役割を担う職業に携わる学生が、自分自身の「衣生活」をどのようにデザインしようを考えているのかを調査し、授業において着装コーディネートの方法を学ぶことで、自己表現力を高め、教師としての「衣生活設計」をデザインする能力をもにつける目的である。2008年、「ファストファション」が登場し、不況に追い討ちをかけるように2011年、東日本大震災に見舞われた。日本の社会に浸透したのは、徹底的にローコストを追求する合理性なファションで、若い学生世代の感覚に合致していると思われる。震災後、復興や節約志向が続く日本に、「流行」という言葉が空々しく聞こえもするが、今、自分が置かれている環境の中で、どのような服装をコーディネートし、どのように自己表現をするのかを指導したいと考える。将来の衣生活設計における創造性をも高めたいと考える。教師として教壇に立つときに何をどのように着るべきかを考えさせることにより、積極的に授業に参加する意欲を向上させ、創造性、表現力を高める目的である。<研究方法> 「衣生活論」の授業において、ファッショントレンドを取り入れ、着装コーディネートをデザインする授業を行う。ファッショントレンドについてデザイン、素材、色彩の領域からその決定方法と詳細について理解させる。特にその年のトレンドが決定される要因にはバックグラウンドとして、流行が生まれる社会情勢、経済情勢などが大きく影響していることを認識させることが重要である。実際に自分自身の着装コーディネートにどのように取り入れたらよいかという指針になるからである。コーディネートの提案手順は、ユニバーサルファッションのデザインプロセスに従って教師の生活・社会環境の分析、問題点の抽出を行った。それらの問題点の解決点、改善点を把握し、要求されるデザイン要素を考察し、最終的に、教師に求められる機能的要素、心理的要素を充足するコーディネートを提案させた。<結果と考察> 学生たちは、教師は教壇で何を着るべきかを考えることで、自分自身の生活環境をより深く分析することが出来た。服飾による自己表現をすることで言葉以上の感情を伝達することができるとも認識した。自分自身を主張するだけでなく、対児童、対保護者、対同僚、対上司という複雑な人間関係を言葉以外のコミュニケーションスキルを駆使して保持しようとする考え方がデザイン提案に表現されている。学生が将来に向けて掲げた課題をまとめると下記のようである。・生活環境と衣生活の密接な関係を学ぶことができ、自分自身の毎日のコーディネートを見直そうと思った。・自分が楽しむだけのファッションでなく、社会的に自分自身を表現することが必要である。・自分自身の個性を表現できる服装コーディネートをすることで、精神的に充実感が得られる。・服装による個性の表現をしたい。教師の服装には制服や制限がないからこそ、衣生活設計が難しいと思う。・服装のコーディネートを変えることで、自分自身の内面を表現し、美しい自分でありたいと思う。将来、教師に  なった時の服装について考える必要があると実感した。・教師はタレントやアイドルではないが、イメージ職であると思う。 教師という存在が周囲からどのように評価されているか認識し、心理的側面から教師の衣生活を設計したい。 服飾教育における学生の自主性を育てる授業は、学生自身が将来良質な衣生活を営む力になる。教師という職業にコミュニケーション力が非常に重要であり、学生がその一端を担う服飾による表現(ノンバルコミュニケーション)が言語以上に重要であると理解できたことは大きな成果であったと考える。