著者
羽鳥 知樹 佐川 寛 水入 紘造
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.1416-1422_1, 1987-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
20

最近4年間に経験した出血性胃潰瘍62例のうち,純エタノール局所注入療法を施行した34例(局注群)を対象とし,非局注群28例を対照として,とくに再出血について検討した.また,注入薬液の局在を把握する目的でindocyanine green(ICG)による色素混入法を試み,その意義について検討した.両群の再出血率を比較すると,局注群では34例中5例(14.7%),非局注群では28例中6例(21.4%)と局注群で低率であったが,すくなからず再出血が認められた.局注群の再出血例の内訳は,1例は噴出性出血例であった.2例は潰瘍底に大小2個の露出血管を有し,点状に存在した1個を見逃がしたために再出血したものであった.残り2例は新生血管からの再出血であった.色素混入法は注入量,注入部位の適否の判断の目安および潰瘍拡大の防止として有用であった.