- 著者
-
能勢 健嗣
- 出版者
- 日本水産増殖学会
- 雑誌
- 水産増殖 (ISSN:03714217)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.4-5, pp.289-300, 1972-12-25 (Released:2010-03-09)
- 参考文献数
- 14
高等動物では通常湿重量中約3.5%, 固形物中では約10%の無機成分が含まれている。Ca, K, Na, Mg, P, S, Clの7種は主要無機元素として要求され, これらは体中総無機元素の60~80%を占めるといわれる。このほか多数の元素が微量ではあるが体中に存在しており, FeあるいはMn以下の量の少ない元素は微量元素と呼ばれている。人間および家畜, 家禽類については無機質の体内における分布, 吸取および排泄, 生理作用あるいは所要量についてかなりよく調べられているが, 魚類については従来から主として透滲圧調整の観点から研究されており, 栄養要求の側からの研究はきわめて少い。魚は水中に生育するため, 環境水と体液の滲透圧の差により, 淡水魚では常に水の浸入と塩類の喪失に, 海水魚では逆に水の喪失と塩類の浸入に曝され, つねに滲透圧の調整を行なわなければならず, その結果, 魚の無機塩の代謝は一般の陸上動物には見らない側面をもっており, 魚の無機塩に対する栄養要求の研究を困難なものにしている。今後, 魚の無機代謝の研究を発展させるためには, 滲透圧および栄養代謝の両面からの研究を並行して行なわなければならない。ここでは魚類の無機塩の経口的要求を中心に述べてみたい。