著者
船曳 悦子
出版者
公益財団法人 竹中大工道具館
雑誌
竹中大工道具館研究紀要 (ISSN:09153685)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.49-59, 2010 (Released:2021-03-22)
参考文献数
24

本稿では、文献資料と古写真、及び実物資料の分析を通して、両刃鋸の発達の経緯について以下の内容を明らかにした。 1 明治10 年の時点では、東京において鋸の先が二つに割れた細工鋸の形状の両刃鋸を文献で確認できた。 2 明治前期には、出現していたと推定できる両刃鋸は、鋸用鋼材としての玉鋼を使用していることを実物で確認した。 3 両刃鋸は明治35 年には商店で購入可能であった。 4 明治期と推定される写真には両刃鋸の使用は見られない。 5 両刃鋸の普及の背景には、鋸用鋼材としての洋鋼( 東郷鋼) と製作技術として油焼入れの一般化、そして利便性への追求があった。