著者
船木 直也 五十嵐 省吾 籏原 照昌 榊原 耕子
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.619-627, 1988-05-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
15
被引用文献数
3

肝細胞癌6例,転移性肝癌5例を含む剖検肝組織中のIII型コラーゲンを組織中のIII型コラーゲンN-末端ペプチド(P-III-P)のRIA法による定量と,ヒト胎盤由来III型コラーゲンに対するモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学染色により検討した.組織重量当りのP-III-P量は正常肝0.24±0.21μg/g Tis,非担癌硬変肝1.83±0.72μg/g Tis,肝細胞癌腫瘍組織0.511±0.272μg/g Tis,腫瘍壁4.39±6.32μg/g Tis,非癌硬変部分4.45±7.34μg/g Tis,転移性肝癌腫瘍組織1.13±1.13μg/g Tis,腫瘍壁2.36±3.93μg/g Tis,非癌肝組織0.0646±0.0690μg/g Tisであった.肝細胞癌6例中4例の腫瘍組織,5例の非癌硬変部,及び転移性肝癌5例中1例の腫瘍組織と2例の非癌部にIII型コラーゲンに対する染色性が認められた.担癌肝組織では腫瘍組織は勿論,非癌部においてもコラーゲン産生が腫瘍の存在により影響を受けている事が想像された.