著者
山崎 博之 船越 哲
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本来Bリンパ球系の表面マーカーであるCD40を介したsignalが、ヒト悪性リンパ腫細胞の増殖を抑制する事が知られているこのが,我々はCD40刺激がヒト前立腺癌細胞の増殖も抑制するのではないかと考え、以下の実験を施行した.ヒト前立腺癌細胞株であるPC3及びLNCaPの細胞表面でのCD40の発現を,抗CD40抗体を用いて、flow cytometryにて検索した.これらがCD40陽性である事を確認した後,遺伝子組み替えにより作られた可溶性CD40ligandを用いて,MTT assayにてその抗腫瘍効果を検索した.PC3及びLNCaPは可溶性CD40ligandとともに培養する事により,その増殖が抑制された.このメカニズムを解明するため,現在TUNEL assay,電顕等にてアポプトーシスの存在の有無を検討中である.またin vivo studyのための基礎実験として,我々はこの細胞株の,severe combined immunodeficiensy(SCID)mouseへの移植実験を行った.まず,5X10^6個のPC3をマウスの腹腔内に注入したところ,第25-30日目で腹腔内播種または肝転移にて死亡した.これらの担癌マウスを,腫瘍接種3日後より可溶性CD40ligand10μgにて治療したところ,コントロール群に比べ,有意な生存期間の延長が得られた.今後はこのin vivoのデータを追試し,確認した後に論文とする予定である.