著者
芦原 直哉
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.317-337, 2008

本稿の目的は交渉が人類社会発展に果たしてきた役割を明らかにし、その歴史認識に立ってこれまでの交渉の定義を見直し、21世紀の社会が正しく発展していくための交渉のタイプを明示することにある。最初に、人類の発展は協力関係による分業の歴史であり、分業を成り立たせたることを可能にしたのは人類が営々と行ってきたコミュニケーションとしての交渉であることを論ずる。次に、その歴史的認識を踏まえこれまでの交渉についての定義である相互の妥協に基づく分配という定義ではなく、新しい定義として「交渉とは、複数の交渉当事者が共通目的を達成するために、コミュニケーションを通じて協力関係を構築し、協働によって価値を創造し双方の問題を解決することである。」とした。最後に倫理観と交渉者双方の交渉目的と利害の関係軸を使って5 つの交渉タイプに分類して今後のあるべき交渉タイプを模索した。結論として、社会の協力関係に基づく分業という観点に立ち返り、従来の交渉タイプである分配型交渉を利害交換型交渉へ、更には共利協働の理念に基づく問題解決型交渉及び最高レベルの交渉である価値創出型交渉に転換するべきであると論じる。