著者
芦川 直也
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-12, 2020 (Released:2020-07-15)
参考文献数
38

心不全症例は増加の一途を辿っていることから、予後不良であるこの病態についての患者およびその予備群における理解度向上は喫緊の課題である。心不全症例に対する薬剤師の介入すべきポイントは、良好な服薬アドヒアランスの確立、ACE (Angiotensin Converting Enzyme)阻害薬、ARB (Angiotensin Receptor Blocker)、βブロッカー、MRA (Mineral corticoid Receptor Antagonist)等の標準治療薬の導入提案、低腎機能例に対する処方支援など多岐にわたる。また、心不全症例は再入院率が高く、これに至る理由が服薬アドヒアランス不良を含めた生活上の不摂生および感染症が過半数を占めることから、他職種と連携して生活面についての患者教育を行うことも非常に重要である。 心不全症例に対して適切な処方提案を行うためには、その心不全が左室駆出率の低下したHFrEF (Heart Failure with reduced Ejection Fraction)なのか、それとも保持されたHFpEF (Heart Failure with preserved Ejection Fraction)なのかを理解しておく必要がある。なぜなら、この2つの状態の間で心不全治療薬の予後改善効果に関するエビデンスが異なるためである。また、心不全増悪時の処方内容について、NSAIDs等の症状増悪に関連した可能性がある薬剤は中止するよう提案すべきである。そして、心不全治療薬の導入においては、ACE阻害薬、ARB、MRAによる腎機能悪化およびβブロッカーによる徐脈に留意し、あわせて利尿薬抵抗性を生じた際には、適切な対処法を提案する必要がある。