著者
高橋 雅弘 越前 宏俊
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.13-27, 2020 (Released:2020-09-03)
参考文献数
26

薬剤師による症例報告は、薬物治療の適切性をEBMの考え方に基づいて評価することで、適正な薬物治療の実践へ貢献することが求められる。薬剤師による患者ケアプロセスはCollect、Assess、Plan、Implement、Follow-upの5ステップから成るが、症例報告ではこれらのうちCollect、Assess、Planのステップが取り上げられる。薬剤師の症例報告では、個々の患者が有する医学的問題点と薬物に関連した問題点を特定するための患者背景情報の収集が最初のステップになり、引き続いて、収集した情報に基づいて患者が抱える問題点のリストアップと介入の優先順位づけが行われる。その後、優先度の高い問題点から順に、薬学的な視点に基づく詳細な評価を行う。薬剤師による問題点の評価は、薬物の適応症(indication)、有効性(effectiveness)、安全性(safety)、アドヒアランス(adherence)の4つの側面(IESA)から段階的に実施することが推奨されている。問題点の評価が完了したら、評価内容に基づいて患者に最も推奨する薬物治療計画を立案する。薬剤師は、薬物治療の専門家としての科学的な考察を十分に発揮した症例報告を通じて、目前の患者にとって最適な薬物治療を提案し、そして実践することが求められる。
著者
秋山 滋男 土井 信幸 田沼 和紀 堀 祐輔 宮本 悦子
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.103-118, 2022 (Released:2022-09-15)
参考文献数
22

一般消費者は疲れ目、アレルギー症状などの軽度な眼疾患の予防や治療を目的にOTC点眼薬を使用している。しかし、点眼薬は無菌製剤であることから不適切な使用による汚染などが原因となりトラブルが発生することが予測される。そのため、薬剤師・登録販売者はOTC点眼薬の購入者に対して適正使用に関する情報提供を行わなければならない。 本研究では、OTC点眼薬の購入経験・使用歴のある一般消費者(以下、購入経験者)を対象として、OTC点眼薬の購入方法とその選択基準や理由、OTC点眼薬の適正使用に関する知識および理解度についてのアンケート調査を実施した。 薬剤師・登録販売者から購入経験者への商品に関する説明状況について尋ねた結果、「特に説明はなかった」が70.7%と最も高い割合であった。OTC点眼薬の開封後に添付の説明書(以下、添付文書)を読むかの設問では、「添付文書を読む」と回答した割合は52.9%(254/480)であった。同様に、購入経験者の適正使用のための主体的な行動指標項目と考えられる「使用時に添付文書を読んでいる」、「薬剤師・登録販売者へコンタクトレンズの使用状況を伝える」、「お薬手帳を提示している」などの項目について実施している割合は低かった。薬剤師・登録販売者からの一般消費者に対するOTC点眼薬販売時に使用目的や患者背景の確認が行われておらず、適正使用に関する指導も不十分である可能性が高く、OTC点眼薬購入者は相互作用、有害事象、副作用などを誘発しやすい状況にあると考えられた。
著者
狭間 研至
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.29-36, 2019 (Released:2019-02-09)
参考文献数
1

2013 年に厚生労働省から示された「地域包括ケアシステム」という概念は超高齢社会となった我が国で、安心して過ごせる社会を作るためには不可欠だ。ただ、この枠組みの中で薬剤師は何をするのかということには議論がある。地域包括ケアにおいては医療の「ことがら」のほとんどは薬物治療が占める。高齢化に伴い複雑化する薬物治療支援のニーズが飛躍的に拡大するなかで、薬物治療の個別最適化が極めて重要であることを考えれば薬局・薬剤師が果たす役割は、入院、外来、在宅など全ての場面で重要になるはずだ。しかし、処方箋調剤業務を機械的にこなす「モノ」と「情報」の専門家としての従来の薬剤師であれば、機械化の進展、ICTの普及によりその重要性は相対的に低下する。一方、薬剤師が、薬を患者さんに渡すまでの仕事から、薬を服用した後の患者さんをフォローすることで前回処方の妥当性を薬学的に評価し、次回の処方内容の適正化につなげるという医師との協働した薬物治療を行う仕事にシフトすることで状況は一変する。このことは、薬を渡すまでとは対物業務、飲んだあとまでフォローするというのは対人業務であることを考えれば、「患者のための薬局ビジョン」に示された、「対物から対人へ」という方向性にも一致する。今後、多くの薬局・薬剤師が地域包括ケアシステムで活躍するようになるには、薬剤師の患者をアセスメントするための知識・技能・態度、薬剤師の患者を診るための時間・気力・体力とともに、調剤報酬の抜本的な改革が必要であると思われる。
著者
土井 信幸 小見 暁子 池永 啓介 大塚 穂乃香 秋山 滋男
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.77-90, 2021 (Released:2021-12-03)
参考文献数
23

一般用医薬品において酸化マグネシウムは瀉下薬の主成分、さらに、解熱鎮痛薬の吸収促進剤に含まれている。酸化マグネシウム製剤は高マグネシウム血症による健康被害や死亡例が報告されており、それに伴う医薬品安全性情報が発出されている。本研究は、酸化マグネシウムを含有した一般用医薬品による高マグネシウム血症発症後の重篤な副作用の回避を目的とし、薬剤師や登録販売者が販売する際の、考慮すべき患者背景と適正使用に関する情報提供内容のエビデンスの構築について検討した。 添付文書の調査の結果、瀉下薬かつ第3類医薬品の酸化マグネシウムの1日最大用量は医療用医薬品とほぼ同じ約2,000 mgであった。また、すべての商品で添付資料(患者説明書)に腎機能に応じた投与量の規定は定められていなかった。JADERの解析結果から、60代以上では高マグネシウム血症発症後の転帰死亡の割合は約2倍高かった。また、メタアナリシスからは、腎機能低下(CKDステージG3b以上)の患者では酸化マグネシウムの服用による高マグネシウム血症発症リスクが高いことが示された(RR[95% CI]: 3.14 [1.56-7.45])。 以上の結果より、薬剤師や登録販売者が酸化マグネシウム含有の一般用医薬品の販売時に、医療用医薬品の服薬有無や年齢や腎機能などの患者背景を確認すること、さらに、購入者に対して高マグネシウム血症の初期症状とその対応についての情報提供をすることが重要であると考える。
著者
芦川 直也
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-12, 2020 (Released:2020-07-15)
参考文献数
38

心不全症例は増加の一途を辿っていることから、予後不良であるこの病態についての患者およびその予備群における理解度向上は喫緊の課題である。心不全症例に対する薬剤師の介入すべきポイントは、良好な服薬アドヒアランスの確立、ACE (Angiotensin Converting Enzyme)阻害薬、ARB (Angiotensin Receptor Blocker)、βブロッカー、MRA (Mineral corticoid Receptor Antagonist)等の標準治療薬の導入提案、低腎機能例に対する処方支援など多岐にわたる。また、心不全症例は再入院率が高く、これに至る理由が服薬アドヒアランス不良を含めた生活上の不摂生および感染症が過半数を占めることから、他職種と連携して生活面についての患者教育を行うことも非常に重要である。 心不全症例に対して適切な処方提案を行うためには、その心不全が左室駆出率の低下したHFrEF (Heart Failure with reduced Ejection Fraction)なのか、それとも保持されたHFpEF (Heart Failure with preserved Ejection Fraction)なのかを理解しておく必要がある。なぜなら、この2つの状態の間で心不全治療薬の予後改善効果に関するエビデンスが異なるためである。また、心不全増悪時の処方内容について、NSAIDs等の症状増悪に関連した可能性がある薬剤は中止するよう提案すべきである。そして、心不全治療薬の導入においては、ACE阻害薬、ARB、MRAによる腎機能悪化およびβブロッカーによる徐脈に留意し、あわせて利尿薬抵抗性を生じた際には、適切な対処法を提案する必要がある。
著者
緒方 宏泰
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-12, 2019 (Released:2019-02-09)
参考文献数
32

【目的】我が国の製薬企業が提供している全身適用の28 の糖尿病治療薬の臨床薬物動態情報を調査し、有効で安全な薬物治療を進めるための本来の目的にそった情報となっているかを検討した。 【方法】製薬企業編集の医薬品インタビューフォーム、および、製造販売承認時の審査報告書及び申請資料概要から情報を収集した。 【結果】F(バイオアベイラビリティ)値は13 薬物で、Ae(未変化体尿中排泄率)値は 7 薬物で、Vd(分布容積)値は13 薬物で、CLtot(全身クリアランス)値は12 薬物で、fuP(血漿中非結合形分率)値は24 薬物で収集できた。F、Ae、Vd、CLtot、fuP の5 パラメータ値の全てが得られたのは7 薬物に限られていた。binding insensitive(IS;fuP > 0.2)の特性を有している薬物は9 薬物であった。binding sensitive(S; fuP< 0.2)の特性を有している薬物は15 薬物あった。21 薬物で腎機能障害患者、肝機能障害患者を対象とした臨床薬物動態試験が行われ、血中総薬物濃度が測定されていた。S の特性を有する医薬品は血中総薬物濃度の変化率のみで用法・用量の調節の必要性を考察することは危険な医薬品であり、臓器障害時の非結合形分率の正常時に対する変化率の情報は必須の重要なものであるが、肝機能障害時に、イプラグリフロジン、ダバグリフロジンのみにおいて測定されていたに過ぎなかった。 【結論】患者の状態に対応して用法・用量の調整の判断を的確に行うための情報としては不十分な状況にあることが明らかとなった。
著者
小西 麗子 磯貝 潤一 石川 沙矢香 宮本 廉 和田守 翼 眞島 崇 向井 啓 小森 浩二 伊藤 慎二 河田 興
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-11, 2022 (Released:2022-02-10)
参考文献数
17

がん患者と薬剤師との信頼関係が構築されるには、面談時における薬剤師の印象が重要である。今回、患者が薬剤師に抱く印象を調査し、薬剤師の継続的な関わりによる印象の変化とその要因について検討した。 対象は、2018年8月から2020年8月に津島市民病院に通院し、初めて外来化学療法室でがん化学療法が導入される患者とした。初回の治療からがん薬物療法認定薬剤師が毎回面談し、初回と5回目の計2回、質問紙により印象を調査した。調査は、愉快さなどの形容詞対を7段階の尺度で評価し、年齢、性別、がん種、Stage、レジメン、有害事象とその対応について電子カルテの記録から収集した。また、予測5年生存率を算出し、患者の属性ごとに各形容詞対の変化を解析した。 14名に対し、3~4か月の間に各5回の指導・面談を行った結果、全体では安定感に関する項目が否定的な印象へ有意に変化した。しかし、年齢、性別、予測5年生存率、有害事象の訴えの有無を患者の属性として印象の変化を比較したところ、女性や有害事象を訴えた患者では、「愉快な」印象へ変化する傾向がみられた(p=0.031、p=0.027)。 がん患者の対応において、5回程度の指導・面談では薬剤師に抱く印象に大きな変化はみられないが、性別や有害事象への対応は印象に影響し、信頼関係構築に十分配慮されるべき要因である可能性が示された。
著者
金井 紀仁 鈴木 義人
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.26-46, 2018 (Released:2018-12-25)
参考文献数
32

【背景】適正で費用対効果に優れた薬剤を継続的に定め、薬剤の選択を管理するために フォーミュラリが用いられる。高尿酸血症の患者を対象に、尿酸生成抑制薬に関する系 統的な論文調査をすることで、フォーミュラリを構築することを目的とした。 【方法】フォーミュラリ構築の手順は以下の通りに行った。1)アロプリノールとフェ ブキソスタットを直接比較した2017 年5 月までの臨床論文を系統的に抽出した。2) 以下の評価項目に関して質的に評価した: 臓器障害の予防、痛風関節炎の予防、尿酸値 低下作用、尿酸値6.0mg/dL 未満への達成率、副作用。3)同等量、薬剤費を評価し、 医薬品の使用の優先順位を付けた。 【結果】7 報の論文が選択された。有効性においては、臓器障害予防と痛風関節炎の予 防効果は同程度であった。アロプリノール1 日200/300 mg とフェブキソスタット1 日 40 mg においては尿酸値低下作用と尿酸値6.0 mg/dL 未満の達成率は同程度であった。 尿酸値6.0 mg/dL 未満の達成率に関しては、フェブキソスタット1 日80 mg 以上の投与 はアロプリノール1 日200/300 mg やフェブキソスタット1 日40 mg の投与よりも有意 な結果を示した。両薬剤間において重大な副作用に違いは見られなかった。アロプリノー ルにより目標尿酸値まで低下できた患者においてはフェブキソスタットから開始するよ りも薬剤費を抑制できることが示唆された。 【結論】高尿酸血症患者への尿酸生成抑制薬のフォーミュラリはアロプリノールを第一 に選択し、尿酸値が目標まで到達しない場合や忍容性がない場合にフェブキソスタット を選択することとした。
著者
村山 隆之
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.13-28, 2019 (Released:2019-02-09)
参考文献数
27

長時間作用性吸入抗コリン薬(LAMA) が喘息に適応拡大されたが、臨床現場でエビデンス 総体を理解することは難しかった。そこで、Sobieraj らが2018 年に発表した喘息患者における LAMAと吸入ステロイド薬との併用に関する系統的レビューを、AMSTAR2 で吟味した。吟味 の結果、研究の除外理由の説明と統計的統合に欠点があり、異質性についての十分な説明等 でも欠点を認めた。統計的統合の欠点は、クロスオーバー試験のデータ抽出および異なる効果量やQOL スケールの統合等であった。LAMAと長時間作用性β2 刺激薬(LABA)との比較について、これらの欠点をKewらのコクラン系統的レビューで使われた統合方法や標準化平均差を利用して対処することで、より多くの研究結果を統合できた。新たな統合結果に基づき、異質性の検討も含めて the Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation に準拠したSummary of Findings を作成し、エビデンス総体を把握した。その結果は、Sobieraj らのレビュー結果と比べて、より精確で現場での臨床決定に利用しやすいエビデンス総体の要約となったが、QOL のアウトカムを除いてレビューの結論に大きな相違はなかった。また、喘息治療で蓄積されてきたLABA のエビデンスと組み合わせたネットワーク・メタ解析を試行し、その有用性を確認した。
著者
相原 史子 蓑毛 翔吾
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.44-52, 2021 (Released:2021-11-05)
参考文献数
15

ラコサミド (lacosamide: LCM)は、電位依存性Naチャネルの緩徐な不活性化を選択的に促進することにより過興奮状態にある神経細胞膜を安定化させる抗けいれん薬である。治療濃度域が確立されていないとされ、TDM(Therapeutic Drug Monitoring)の施行は一般的ではない。今回、LCM 300 mg/dayで投与中、てんかん発作による意識障害を主訴に救急搬送された61歳代男性の治療経過中に、発作性心房細動・徐脈頻脈症候群が出現し、病棟担当薬剤師が血漿中LCM濃度測定を提案、結果を薬物動態の特徴から解析・報告した症例を経験したので報告する。LCMは血漿中濃度上昇に伴い有害事象の発現頻度が増加することから、腎機能低下が認められる症例には、予測されるクリアランスの低下を基にした用量調節や、血漿中濃度測定結果を基にした評価が必要である。血漿中濃度の参考値として、臨床試験結果の活用が可能である。有効性と忍容性が確認できた個々のLCM血漿中濃度の把握は、薬物動態変化時の用量調節に有用と考えられることから、積極的なTDMの活用が望まれる。
著者
酒向 あずみ 左京 瑛奈 松永 浩明 関口 昌利 一色 滉平 越前 宏俊 伊藤 慎 鈴木 祥司 西 功
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.124-134, 2022 (Released:2022-10-13)
参考文献数
17

本邦において外来心臓リハビリテーションに参加する患者集団における服薬アドヒアランスへの影響因子の検討は十分ではない。本研究ではこの集団の服薬継続支援のため、処方薬服用遵守度だけではなく患者の治療に対する自発性等も調査できる構造化対面式アンケート調査法を用いて服薬アドヒアランスの調査と影響因子の探索を行った。35名の患者からUenoらの質問票を用いて得た服薬アドヒアランス評価に関する下位尺度スコアは、「服薬遵守度」(中央値15点)及び「服薬の納得度および生活との調和度」(14点)は高かったが、「服薬における医療従事者との協働性」(8点)と「服薬に関する知識情報の入手と利用における積極性」(7点)が低値であった。また「服薬遵守度」は非就労者で高く(15点)、「服薬における医療従事者との協働性」は有配偶者で高かった(11点)。本研究は予備的ではあるが、今後外来心臓リハビリテーション患者の服薬アドヒアランス向上或いは維持を図るためには、薬剤師が「患者との協働性」を改善するために患者の求める情報の察知に基づく薬物の情報提供を行い、患者の治療への主体的参加への動機付けを高める事が重要であると考えた。
著者
米田 正明 土井 信幸 新井 克明 宮本 悦子 高橋 真吾 淺野 未代子 秋山 滋男
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.49-58, 2022 (Released:2022-04-28)
参考文献数
18

地域包括ケアシステムの進展に伴い、在宅医療において薬剤の経管投与患者は今後増加することが予想され、経管投与患者・介護者への簡易懸濁法の指導および支援の重要性が高まると考えられる。本研究では、保険薬局の管理薬剤師を対象に、経管投薬支援料算定開始に伴う算定状況および経管投与患者への薬剤投与方法の実態を明らかにすることを目的に調査した。 結果、384薬局から回答を得た(回収率53.5%)、経管投薬支援料を算定しているのは2.1%(6/283薬局)と低く、簡易懸濁法の指導経験のある保険薬局も13.8%(47/341薬局)と低かった。患者に対して簡易懸濁法の指導経験のある保険薬局は、指導経験のない保険薬局と比較して、簡易懸濁法に不適切な薬剤に対して医師への処方提案を行った経験は14.9% (7/47)と有意に高かった。簡易懸濁法の習得方法は、「インターネット上のWebサイト」との回答が55.3 %と最も高い割合であった。Webサイト上の情報源は信頼性が低い場合があることに留意すべきである。今後、製薬企業がインタビューフォームやホームページなどで適正な情報開示を行うことが期待される。また、薬剤師が経管投与患者やその介護者に対し簡易懸濁法の適切な支援を行うためには、薬剤師会などが主体となり実技研修を行うとともに、信頼性の高い情報の集積と情報提供体制の強化を図り、実地研修の機会を増やすなどの対応が望まれる。