著者
石井 俊史 若杉 正清 長沼 司 温井 郁夫 井口 楓 井上 正晴 神宮寺 禎巳
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.461-465, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
10

症例は89歳男性.54歳頃に2型糖尿病と診断され,レパグリニド1.5 mg/日,テネリグリプチン20 mg/日,ボグリボース0.6 mg/日の内服を行っていた.閉塞性動脈硬化症に対しクロピドグレル75 mg/日の内服開始翌日の夕食後に低血糖昏睡で入院となった.経口血糖降下薬はすべて中止したが,第3病日まで低血糖が遷延した.退院後,再度併用を開始した2日後の夕食後に再び同様の重症低血糖で入院し,第2病日まで低血糖が遷延した.レパグリニドは短時間作用型のインスリン分泌促進薬であり,単独では遷延性低血糖を来しにくい.Tornioらは,クロピドグレルによるCYP2C8の阻害がレパグリニド血中濃度を上げると報告したが,本症例はこの機序による低血糖と推測された.両薬剤は大血管障害を有する糖尿病患者において併用されることも多く,併用の際には相互作用による低血糖に十分注意する必要がある.