著者
原口 義座 島田 和明 星野 正己 永田 伝 若林 利重 岡田 利夫
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.20, no.9, pp.673-678, 1987-09-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
16

当院で経験した消化器疾患のうち急性呼吸不全に腎不全を合併し, 血液透析を要した例における呼吸循環系機能, 特に血管外肺水分量の推移について検討を加えた. 対象は6例, 11回である. 検討項目は, 血管外肺水分量 (extravascular lung water: 以下EVLWと略す) の他, 肺動脈拡張期圧 (以下PAEDP), PaO2, 心係数 (以下CI), 全身状態などであった.結果: EVLWは, 血液透析 (以下HD) 前値で9.57±435ml/kgBWと増加例が多く, 中でも10ml/kg BW以上の中等度増加以上が64%を占めた. また全身状態不良例に高値を示す傾向がみられた. HDの施行によりEVLWは多くの例で減少したが, HD終了後, 徐々に前値に復する傾向があった. HDによる他の項目の推移に関しては, 1) PaO2, CIはHD中は低下例が多く, HD後, 時間を経ると改善する例もかなりみられた. 2) PAEDPは一定の傾向を示さなかった.呼吸不全例に腎不全合併した際のHD施行にあたり, HD中にみられるPaO2低下は注意を要する点である. この低下の原因としては幾つかの機序が推定されている. 我々の検討では, EVLWの減少例が多いことから考えると肺水腫, 特にpermiability edemaの進行によるものは否定的であり, 他の原因 (循環系抑制, 白血球の肺血管へのmargination, cellophane膜の影響による補体系の異常等) を考慮すべきと考えられた. 一方今回経験したHD中およびHD後早期のEVLWの減少の機序としても, 多くの機序が考えられるが, そのうちの1つにHDによる有毒物質の除去の関与している可能性もあり, さらに検討を加えるべきと思われた.