- 著者
-
前田 憲志
- 出版者
- 社団法人 日本透析医学会
- 雑誌
- 人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.2, pp.103-113, 1982-03-31 (Released:2010-03-16)
- 参考文献数
- 13
近年, 高Na透析が用いられるようになってきているが, これを長期間, 多数例に用いるには十分な管理が必要である. 従来の低Na透析も15年以上にわたる実績があり, いくつかの長所がある. しかし, 低Na透析では, 血漿浸透圧の低下が著しく, そのためにplasma refilling rateが低下し, 血漿量の減少を招き, また, 血漿中より細胞内への水の拡散も生じ, 透析後において細胞内液量の減少は少なく, 血漿量の減少が大きいなどの問題点がある. 反面, 高Na透析においては, 細胞内よりの除水が期待できるので, 血漿量の維持は容易である.高Na透析法には, その目的や使用法において, 次のような方法がある.1) 生理的Na濃度透析液を用いる法2) 非生理的Na濃度透析液を用いる法3) 非生理的Na濃度透析液に飲水を併用する法4) Sodium gradient method (SGM)5) Cell-wash dialysis (CWD)1) 及び2) は, その生理的意味は全く異なっており, 1) においてはNa free wateはほとんど除去できないが, 2) ではNa free water clearanceが著しく上昇する. この効果は, 血流量200ml/分の透析では, 透析液Na濃度160mEq/l以上で明らかとなり, 170mEq/l以上で著明となる. また, 160mEq/l以下では, その生理的意義は1) の場合とほぼ同じであるから, 実用上の1) と2) の区別は, 透析液Na濃度160mEq/lを境にするのが適当である.高Na透析液の使用に際しては, Na出納のバランスを考慮しなければならないので, 必要な時期に必要なNa濃度の透析液を用いるSGMが, 実用上きわめて有用な方法である. 実際には, Na濃度と除水量が自由にプログラミングできる装置が便利である. また, CWDでは, 従来の透析でコントロール不良の, いわゆる透析困難症にすぐれた効果を示し, 尿素窒素の上昇率を一定期間低下させる効果や, カリウムめ除去量の増大がみられる.