著者
赤井 佑三子 茂木 香保里 定成 秀貴 武本 眞清 松原 京子 大黒 徹 土田 裕三 桜井 大輔 村山 次哉
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日代替誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.83-91, 2017
被引用文献数
1

我々はこれまでに,イネ科植物クマザサの含有成分の一つであるtricinが,ヒトサイトメガロウイルス (human cytomegalovirus: HCMV) に対して抗ウイルス効果を示すことを明らかにして来た.本研究では,既存の抗炎症薬でありCCR2アンタゴニストであるgermanium化合物を用いて,tricinとの抗HCMV作用を比較検討することでその作用機序を明確にすることを目的とした.その結果,HCMV感染により増加したCCL2とCCR2の遺伝子発現とタンパク質発現およびHCMV増殖は,germanium化合物処理により濃度依存的に抑制された.またtricin処理では,germanium化合物に比較してより強い抑制効果が観察され,約1/100の濃度で有意に抑制されることが明らかになった.これらの結果から,既存の抗炎症薬・germanium化合物より強力なCCL2発現抑制作用や抗HCMV作用をもつtricinは,これまでの抗HCMV薬には見られない新たな作用機序を持つ抗炎症性HCMV治療薬の候補となる可能性が示唆された.