著者
阿久澤 和彦 山田 理恵 畢 長暁 定成 秀貴 松原 京子 土田 裕三 渡邊 邦友 二ノ宮 真之 纐纈 守 村山 次哉
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.25-33, 2010 (Released:2010-04-02)
参考文献数
21
被引用文献数
2

現在我々は,代替医療薬を中心に抗 HCMV 薬の探索を行っており,防腐作用(抗菌作用)を含む種々の生理活性をもつクマザサに着目し,その熱水抽出液に抗 HCMV 作用があることを明らかにしてきた.今回,クマザサ熱水抽出液の成分の一部が分離・精製・同定され,その中の 1 つである tricin がウイルス粒子産生に最も高い抑制効果を示すことがわかった.また,その抑制効果は,クマザサ抽出液同様のウイルス感染後の処理だけでなく,感染前処理した場合にも見られることがわかった.さらにリアルタイム RT-PCR 法および,ウエスタンブロット法による解析の結果,tricin がウイルスの複製・増殖に重要な major immediate early (IE) 遺伝子の発現を抑制することがわかり,tricin が現在使用されている GCV とは異なる作用機序により抗 HCMV 効果をもつことが示され,新たな治療薬としての可能性が示唆された.
著者
赤井 佑三子 茂木 香保里 定成 秀貴 武本 眞清 松原 京子 大黒 徹 土田 裕三 桜井 大輔 村山 次哉
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日代替誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.83-91, 2017
被引用文献数
1

我々はこれまでに,イネ科植物クマザサの含有成分の一つであるtricinが,ヒトサイトメガロウイルス (human cytomegalovirus: HCMV) に対して抗ウイルス効果を示すことを明らかにして来た.本研究では,既存の抗炎症薬でありCCR2アンタゴニストであるgermanium化合物を用いて,tricinとの抗HCMV作用を比較検討することでその作用機序を明確にすることを目的とした.その結果,HCMV感染により増加したCCL2とCCR2の遺伝子発現とタンパク質発現およびHCMV増殖は,germanium化合物処理により濃度依存的に抑制された.またtricin処理では,germanium化合物に比較してより強い抑制効果が観察され,約1/100の濃度で有意に抑制されることが明らかになった.これらの結果から,既存の抗炎症薬・germanium化合物より強力なCCL2発現抑制作用や抗HCMV作用をもつtricinは,これまでの抗HCMV薬には見られない新たな作用機序を持つ抗炎症性HCMV治療薬の候補となる可能性が示唆された.