著者
森山 俊朗 茶山 和敏 松沢 昭雄
出版者
公益社団法人 日本実験動物学会
雑誌
Experimental Animals
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.209-214, 1991

1匹の白内障雌DDD/1-<I>nu/+</I>マウスを見いだし, 兄妹交配の反復により, 白内障発生率100%の有毛ミュータント系を樹立した。DDD/1とのF<SUB>1</SUB>, F<SUB>2</SUB>および戻し交配集団での白内障個体の分離状態から, 白内障が常染色体上の単一の不完全優性遺伝子の支配下にあると結論し, この遺伝子を<I>Cti</I>と命名した。DDD/1-<I>Cti/Cti</I>マウスでは, 胎生期にレンズの白濁が始まり, 開眼時 (13~14日齢) に白内障と認知され, 28~42日齢には成熟白内障を呈したが, 56日齢後には白濁が軽減し, 140日齢では中心部に白濁点を残すのみとなった。DDD/1-<I>Cti/+</I>は発症が遅く, 28日齢以後に白内障と認知され, 35日齢には成熟白内障となったが, 42日齢には白濁が軽減し始め, 56日齢では肉眼的に正常に見えた。<I>Cti/Cti</I>では眼球およびレンズの成長が正常に比べ, わずかに遅れたが, 小眼球症を伴わなかった。<I>Cti/Cti</I>と<I>Cti/+</I>の両方で, レンズの白濁が強い時期に一致して, レンズの含水量が高かった。DDD/1-<I>Cti/Cti</I>とA/JとのF<SUB>1</SUB>ではDDD/1-<I>Cti/+</I>と同じ経過で白内障が起こり, BALB/cとのF<SUB>1</SUB>では肉眼的白内障が約10%で起こったのみで, ヘテロ状態の<I>Cti</I>の発現が背景遺伝子の影響を受けた。DDD/1-<I>Cti/+</I>はレンズ白濁軽減のモデル動物として白内障研究に有用と思われる。