著者
草薙 恵美子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.42-50, 1993-07-10

気質と関連するとおもわれる変数間の関係について, これまであまり明らかにされていない。本研究の目的は快, 恐れ, 怒りの表出の個人差の間の関係, 及び快, 恐れの個人差と接近傾向の間のそれぞれの関係を検討することである。21名の乳児を情動的及び運動的反応を評定するために実験室において観察した。また, 日常生活での情動性を評定するために母親の記入した気質質問紙も用いた。得られた結果は次のようになった。 (1) 快, 恐れ, 怒りの表出傾向は互いに独立である。 (2) 実験室での反応及び質問紙の結果からより恐ろしがりの乳児は新奇性の高い刺激物に対してより遅く接近する傾向がある。 (3) 社会的場面でより微笑・笑いを示す乳児は新奇性の高い刺激物に対してよりはやく接近する傾向がある。これらの結果から, 各々の情動性を気質の構成要素と考える理論が支持され, また, 接近における個人差は快及び恐れの傾向と独立ではないということが示唆される。