著者
荒井 きよみ
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

【目的】平成17年に施行された食育基本法の前文で「国民一人一人が「食」について改めて意識を高め、自然の恩恵や「食」に関わる人々の様々な活動への感謝の念や理解を深めつつ、「食」に関して信頼できる情報に基づく適切な判断を行う能力を身に付けることによって、 心身の健康を増進する健全な食生活を実践する」とある。  すなわち、現代の「食」をめぐる問題の解決を目指すならば、心身の成長が著しい高校生に家庭科教育を通して、食生活への意識や能力を育む必要があると考えられる。そこで、高校生の実態から食をめぐる現状と課題を明らかにすることにより効果的な家庭科授業の実践に役立てる。【方法】2012年1月に高校生の食行動および意識について質問紙調査を実施した。 調査対象は、関東の公立高校1~3学年の638名(男子119名、女子519名)である。調査内容は外食産業の利用状況、行事食や日常食の食経験と社会問題に配慮した食品への関心、1日3回の食事の摂取率や内容についての14項目である。【結果】(1)マクドナルドの利用経験率は99.1%であった。膨大な広告費をかけたCMや景品による企業戦略の効果も考えられる。(2)吉野家の利用経験率は77.4%であった。(3)ガストの利用経験率は88.9%であった。(4)田作りの食経験率は84.6%であった。(5)親子丼の食経験率は96.7%であった。親子丼は和食の定番として根づいているといえる。(6)フェアトレードのチョコレートの食経験率は49.8%であった。フェアトレードが1年生の英語の教科書にとりあげられていたり、家庭基礎の調理実習で材料として使用したためと考えられる。自ら「フェアトレード商品を購入した」という行動まで発展させることが今後の課題である。(7)朝食の欠食率は8.6%、主食は米が48.0%、共食は39.4%であった。(8)昼食の欠食率は2.8%、主食は米が78.9%であった。また、昼食の弁当が家族の手作りは65.8%、自作が8.0%であった。(9)夕食の欠食率は2.7%、共食は68.2%であった。夜9時以降に摂るものが19.9%であった。成長するにつれ共食はかなり減少傾向にある(日本スポーツ振興センター2005)が、アルバイトや塾などによる生活時間の変化によるものと考えられる。脂質の過剰摂取の食生活から「日本型食生活」へ再び注目が集まる(健康日本21評価作業チーム2011,農林水産省2012)なか、朝食で主食として米を摂取している回答者は半数以下にとどまった。食の簡便化の傾向がうかがえる。弁当箱に詰める形態をとる昼食の場合、主食が米の割合は8割近くにのぼる。(10)食生活に対する興味が「大変ある」16.9%、「少しある」39.0%、「あまりない」28.8%、「全くない」7.8%であった。高校生が身近な問題として自分の食に興味を持つようになるためには、伝統食や朝食の摂取、夕食の摂取時間および共食の重要性が有効な視点であることが明らかになった。